誰かが優しく髪の毛を撫でてくれる感じがして目が覚めた。「うっうーん」何だかよく寝た…って「えっ亘くん?」

「よく眠ってたな。望夢も今はよく眠ってるから静かにな」
見渡すとベッドの上で望夢がスヤスヤと寝息を立てていた。

「亘くん。ごめんね。望夢の面倒見ててくれたんでしょ。泣かなかった?」

「詩織が疲れてるのにわかってあげられなくてごめんな。望夢はいい子だったぞ、ご飯もいっぱい食べられたし、俺が抱っこしてても平気でしかも寝てくれてた。看護師さんから聞いたけど、詩織ちゃんとご飯も食べれてなかったみたいだし、シャワーもゆっくりできてなかったって?俺は今日、一緒に泊まるから今のうちにゆっくりシャワーでも浴びておいで…でもその前に…」チュッと触れるだけのキスをしてくれた。久しぶりで何だか照れてしまってると「そんな可愛い反応するなよ。こっちまで照れるよ。まぁ…2年は…長かったよな」ポンポンと頭を撫でられた。

そう。2年もの間、亘くんと離れて過ごしていたのだ…色んなことがありすぎて忘れていたけど…確かに大変だった…亘くんの家を出て札幌まで来て、そして望夢を産んだ…

「詩織、とりあえずシャワーでも浴びてきたら?そのあと詩織の2年間のこと教えてほしい」

「えっ?私の?」

「そう。俺の家から出て、どうして札幌に来たのか、どこの病院で働いて、どうやって今まで過ごしていたのか…詩織のこと全部知りたいから…望夢が起きるまで、ゆっくりしておいで」

「ありがとう亘くん。私も色々聞いてほしいの。たくさんの人にお世話になって今まで生きて来れたから。じゃあお言葉に甘えて行ってくるね」

私は久しぶりにゆっくりシャワーを浴びた。いつもは看護師さんもびっくりするほど早く上がって髪の毛もちゃんと乾かさずにいることが多かった。今日は久しぶりに化粧水も乳液も付けてドライヤーもできた。亘くんのおかげだ。

望夢はパパに会って嬉しいと思ってくれているかな?沙代子さんと、あやちゃんは望夢のパパに会えたって
言ったら喜んでくれるかな。2人にどうやって報告しようかな?亘くんは会ってくれるかな?そんなことを考えながらシャワーから戻った。珍しく望夢はまだ夢の中だった。どんな夢を見てるのか…かわいい寝顔を思わず笑みが溢れた。