泣きながら家に行くと門の前に誰かがいるのに気がついた。

「詩織…どうした?何かあったか?」

「わ…た…る…くん…ぐすっ…」

「詩織、とりあえず家に入ろう。寒くなってきたから…な…」

亘くんに支えてもらいながら家に入ったが…なんの声も聞こえない…

「亘くん…だっ…れ…も…いなくっ…なっ…ちゃったっ…」
「なんで…なんで…私だっけ…生きてっ…いるの…わっ…たし…も…みんなっ…と…一緒…に…いきた…かった…よ」
「あ゛ーっあ゛…な…ん…でぇー」
私はみんなのお骨の前で泣き喚いた。
亘くんは私を支えて何も言わず背中を撫でてくれた。しばらく泣いて泣き疲れて…目が痛くなってきた。

「何か飲むか?お湯でも沸かすか?」

何度か家に来たことがある亘くんが台所でお湯を沸かしてくれ、レンジで温めたタオルを渡してくれた。

「目…腫れるから…」

「ありが…とう…」

タオルを目の上に乗せると温かくて…また涙が溢れ落ちそうになった。

「退院して身体の調子はどうだ?」

「うん。大丈夫…」

「少し飲めるか?」

温かい紅茶は少し甘めで、美味しかった。そういえばお昼も食べてなかったなぁーと考えていると
「夕飯、食べたか?」と聞かれた。

「昼から食べて…ない…」  

「なんか食べられそう?食べに行ってもいいし…買ってこようか?」

「いらない…」

「詩織、お前まで倒れたら…」亘くんの言葉を遮って「誰も心配なんかしてくれない。誰も…誰もいないんだから…一人ぼっちなの」そう言った私の肩を掴んで

「お前、何言ってんだ!詩織が…詩織が倒れたら俺が心配する。詩織は一人ぼっちじゃない俺がいる。俺じゃ頼りにならないか?」  

「そんな事ないけど…でも…」

「でも…なんだ?」

「もうね…誰もいないの…お父さんも…お母さんも…お姉ちゃんも………彼氏もねっ…他に彼女いたの…亘くんにだって大事な人がいるでしょ。迷惑かけられないから…もう寝るから帰って…ね…」  

「詩織…俺にとって大事なのは昔からお前だけだよ。こんな時だけど…詩織の事が心配だから、寂しいなら、行くとこないなら俺の家に来い。お前1人くらい面倒見れる」

「行かないよ…ここにいる…みんなと一緒に…」

「詩織…じゃあ今日は俺もここに泊まるよ。お前1人にはさせられないから…」

「仕事は?」

「休みをとった。詩織が心配だからな」  

「っえ…?なんで?」

その時、ピンポーンとインターホンがなった…