沙代子さんが言ってくれた言葉も理解はしてるけど…それでも亘くんには会えない。逢っちゃいけないと思っていた。

ある日、保育園から帰って来て、ご飯の用意を始めた頃から望夢がぐずり始めた。抱っこをすると体が少し熱いように感じて熱を測ると37.5度と少し高かったが明日病院に連れて行こうと様子を見ていた。夜中になると「ゴホッ、ゴホッ」と湿ったような咳をし始めた。苦しそうで、かわいそうになる。やっぱりわが子が体調が悪いと切なくなってくる。

次の日、休みを取って病院に行ってきた。熱が38度を超えてかなり辛そうだ。その日の夜、望夢を囲んで3人で話してたときに、けいれんを起こしてしてしまった。初めてのけいれんで、あたふたしている私の横で、沙代子さんが対処をしてくれ、あやちゃんは初めてだからと救急病院に連絡、タクシーを呼んでくれた。私は言われるがまま、急いで荷物を持って望夢を抱っこしてくれてる沙代子さんと、あやちゃんとタクシーに乗った。現在働いてる病院ではなく、こども病院に向かった。
けいれんの時間は短くて多分、熱性けいれんの可能性が高いと思った。頭ではわかっているし、小児科にいるときに、そういう子の対処もしてきた。わかってるはずだった…なのに、わが子になると何もできなかった…看護師の資格を持ってても何の役に立たない。自分が情けなくて涙が出てきた。母親失格なんじゃないかと…

「詩織ちゃんも怖かったね。自分の子は他人の子と違うから…私達がいる時でよかったわ。私達は家族よ。お互い助け合っていけばいいの。だから自分が悪いなんて思っちゃダメだよ」そう沙代子さんは言ってくれた。少しだけ、心が穏やかになった…

病院でも熱性けいれんを疑われた。風邪の症状で薬を飲んでることを伝えると、すぐにレントゲンを撮ってくれて少し影が見えるから肺炎の疑いもあるので入院して治療しましょうと…

「入院…ですか?」
「念のため、しっかり様子を見ましょう。熱もまだ高くて月齢が小さいので脱水の危険もありますから」
「あの…付き添いはできますか?初めての入院なので…」
「わかりました。看護師に確認するので待っていてくださいね」
「よろしくお願いします」

「川原さん、付き添い入院できますので案内しますね」
こんな小さな子を1人になんて出来ないのでホッとした。

「沙代子さん、あやちゃん、しばらく心配かけるけど…すみません。やっぱり1人にはさせたくなくて、仕事も、休むことになって…」

「大丈夫よ。心配しないで、しっかり診てもらうのよ」

私は看護師さんに案内してもらって病棟に向かった。