「詩織…どうした?電気もつけないで」
帰ってきた亘くんに抱きしめられた。
「なにかあったか?」
亘くんの胸に顔を埋めた。爽やかなシトラスの香りがして心臓の音にだんだん落ち着いてくる。
「なんでもない。ごめんね。歩き疲れたのかな?」
「こっちこそ今日はオンコールじゃなかったのに。悪かったな1人にさせて」
「仕方ないよ。お医者さんだもん。大丈夫なの?」
「あぁ…大丈夫だから任せてきた。詩織…なにか食べた?」
「ううん…何も…」
「じゃあ簡単にパスタでも作るから、お風呂入っておいで」
席を立とうとした亘くんのジャケットを思わず掴んでしまった。
「詩織?」
「ごめん…なさい」
「もう少しこうしてようか…」
頭を抱えるように抱きしめられ胸がキュンと音をたてた。
「亘くんが好き」
「詩織?」
「亘くんが好きなの」顔を見られたくなくて、亘くんの胸に顔を埋めた。
「俺も詩織が好きだよ」
頬に手を当てて耳元で囁かれ「チュッ」と音を立ててキスをされた。
恥ずかしくて身をよじると後頭部を押さえられ唇が重なる。ついばむようなキスが角度を変え強く深く触れ合う。薄く開いた口から舌を差し込まれ、お互いの舌を絡ませ合った。

「ふ…うぅ…んっ」
「詩織の声、もっと聞きたい…かわいいな」
「……っ」
「詩織…好きだよ。もう我慢の限界」
「我慢って…」
「そうだろ?好きな女と一緒に暮らして、寝起きの詩織とか、シャワーの後の詩織とか…いっぱい見てるんだぞ、でも詩織の気持ちが追いつくまでって」
「そんなこと…」
「わかってるよ。詩織が寂しくて1人で泣いてるのも」
「えっ…知ってたの?」
「もちろん。たまに目、赤くなって起きてくるし、詩織のドアの隙間から声漏れてたし…でも俺を頼らないのは、まだ気持ちが追いついてないんだろうって。でももう1人で泣かなくていい。今日からは一緒に寝るから。いいよな」
「亘くん…」
亘くんの首に腕を絡ませ抱きついた。
「詩織、教えて。どうして電気もつけずにいたの?」
「亘くんがいなくなって、1人になったら急に寂しくなったの」
「うん…」
「亘くんのこと好きだけど好きになっちゃいけない気がして…」
「どうして?詩織が好きって言ってるよね?」
「私…お姉ちゃんの代わり?」
「そんなわけっ」
「だって…」
「香織とは、ただの同級生。付き合ったこともなければ、好きになったこともない。なんなら俺が詩織のことずっと好きなのを知っていたよ」
「お姉ちゃんが?」
「そう。だから代わりなんかじゃない。俺が必ず詩織を幸せにするから」
「いなくならない?離れたりしない?」
「詩織のそばにいる。ずっと…離れないから…」

亘くんに抱きあげられ亘くんの部屋にある大きなキングベットに押し倒された。