教室に着くと、さっそくあのペア――鮫上くんと倉下さんの話題で持ちきりになっていた。
 しかも、あの2人と同じクラスだなんて! わたし、最高にツイてる!
 目立たないようにコソコソっと自分の席に着くと、うしろの席の女の子に声をかけられた。
「おはよーっ。あたし佐山実玖。よろしくね。ねえねえ、昨日の鮫上くんたちのSNS見た!?」
「あ、はい。見ました。えっと、水瀬希子です。よろしくお願いします」
 そう言ってぺこりと頭を下げると、
「えー、そんなかしこまんないでよー」
 と言われてしまった。

 だって佐山さん、アイドルだって言われても信じちゃうくらいカワイイんだよ!?
 背中の真ん中くらいまである、さらっさらのロングヘアに、パッチリとした二重。
 すっと通った鼻筋に、ぷるんっと艶やかな唇。
 こんなの、緊張しない方がムリだって。
 しかも、教室の中をぐるっと見回してみたんだけど、みーんなカワイイんだから!
 ひょっとして、凡人はわたしだけ??

「それにしても、いいよねー。初日からラブラブなカップルは。あ、でも希子ちゃんのとこもラブラブかぁ」

 らぶ……らぶ?

 わたしが小首をかしげていると、
「ほら、お隣のカレと一緒に教室入ってきたじゃん。うちなんか、あたしがまだ洗面所にいる間に、気付いたらいなくなっちゃってたんだよ!?」
 と言って、佐山さんが唇をとがらせた。

 そういえば由井くん、準備の遅いわたしのこと、待ってくれてたんだっけ。

 ちらっと隣を見ると、由井くんは頬杖をついて、ぼーっと教室の入り口のあたりを見つめていた。