『一番になるなんて、どんなに努力したってムリムリ! 自分の目的のために最大限この環境を利用すればいいんだってー』
 悪魔な自分が笑い飛ばすと、
『なに言ってるの!? 本気でやらないなんて、相手に失礼だわ』
 今度は天使な自分が、頭の中でプンプン怒りはじめた。

 ああ、もうっ。うるさーい!!

 両手をバタバタ振って頭の中から天使と悪魔を追い出そうとしていたら、危ないものでも見るような目で由井くんに見られているのに気がついた。
「いやっ、これは、その……」
 必死に言い訳の言葉を探していたら、「風呂、入ってくれば?」と、由井くんがそっけなく言った。
「そう、ですね。そうします! そうだ、着替え取ってこなくっちゃ」

 慌ててロフトの個人スペースへと駆け込むと、しんと静まり返った空間に、ホッと一息つく。

 これから3年間、ここで本当に暮らすんだ。
 受験が終わって、入学準備やら引っ越し準備やらに追われ、気付いたらこの入寮日を迎えていたけれど。
 やっと、これを現実のこととして受け止められたような気がする。

 わたし、大変なところに来ちゃったんだ。