「渉は全然悪くないから。あたしのパートナーの吉野って、思ってた以上に嫉妬深くてさ。この前のデート遠足以降、なんだかんだ言っては渉にからんでたのよ。それで、昨日ついに決定的に渉の逆鱗に触れるようなこと言っちゃって。ほんとごめんなさい。あたしが、あのとき渉のことをストーカーみたいに言ったせいでこんなことになっちゃって……」
「結局、どうして由井くんはそんなに怒ったんですか?」
「水瀬さんのね……悪口を言ったのよ。『おまえマジでツイてないよなー。あんな地味なやつがパートナーで』って」
「……そんなことで? そんなの……わたしが一番よくわかってることなのに」
「あー、もうっ。そんなふうに自分のことを言っちゃダメなんだからね? 渉、言ってたよ。『希子のいいとこ、なんも知らねーでそんなふうに言うな』って」
「え……」
「それにね、悔しいけど、あたしといたときよりも渉、なんだか毎日楽しそうなんだよね」
 ミユさんが、少しだけ寂しそうに笑った。