同居人は赤髪のヤンキーくん!?

 6時間目の授業が終わるのと同時に、わたしは荷物をまとめて走って部屋に戻った。
 そこにいるはずなのに、由井くんのロフトからは、物音ひとつ聞こえてこない。
「由井くん、いるんだよね? ねえ、なにがあったの?」
 おそるおそる声をかけてみたけれど、返事は返ってこない。
「なんにもないのに、殴ったりしないよね?」

 見た目はヤンキーみたいだけど、わたし、なにひとつ乱暴なことなんかされたことないよ?

 わたし以外の人にだって、みんなに親切で、意外とみんなの人気者だってことも知ってるよ?

「悪かったな。こんな問題起こしたら、結婚科に残る水瀬までイメージダウンになっちまうってのに。ホントごめん」
 ロフトから、ぼそぼそとそう言う声だけが聞こえた。

 謝罪なんかじゃなく、わたしは理由が聞きたいのに。

 だけど、由井くんはそれ以上なにも言ってくれなかった。


 翌朝。わたしは、はじめて1人で部屋を出た。
 当たり前のように、隣に由井くんがいた生活。
 それが、なんだか遠い昔のことのように感じるよ。
 教室でも、もちろん隣は空席のまま。

 寂しい……。寂しいよ、由井くん。