カボチャの馬車に向かいあって乗り込んだわたしたちは、ずっと黙ったまま。
 由井くんの顔を見ることもできなくて、ずっと足元を見つめている。

 まだ胸のあたりがムカムカする。どうしたらなくなってくれるのか、全然わからないよ。

「さっきはさんきゅーな」
 由井くんが、ぼそっと言うのが聞こえた。
「本当のことを言っただけです」
 自分でもビックリするくらい、トゲトゲした声。
 そんなわたしに小さくため息を吐くと、由井くんが続けた。
「『もっとリードしてくれる人かと思ってたのに、全然ちがった。高校で新しい人を見つけるから別れて』って言われて、一方的に振られた」
 そっと由井くんの方を見ると、視線はメリーゴーランドの乗り場から立ち去る元カノの背中に向けられていた。
 その切ない表情に、ズキッと胸が痛む。
「まさかアイツもここを受けてたなんて、全然知らなかったよ」
「そう……なの?」
 わたしの口からこぼれた声に、由井くんはわたしの方を見た。