それから、いくつかの乗り物に乗ったり、売店でホットドッグを買って食べたりしたんだけど、由井くんはずっと不機嫌を身にまとったままだった。
「あと30分くらいで集合時間か。最後、乗りたいのある?」
 スマホで時間を確認した由井くんが、わたしの方を見る。
「メリーゴーランド! ……乗っても、いい?」
 そう言ってから、由井くんの顔をそっと覗き見る。

 由井くん、ひょっとして、ああいうのは恥ずかしいかな?
 言ってしまってから、ちょっとだけ後悔。

「好きなの? 食いつきが今日イチなんだけど」
 そう言って、由井くんがクスッと笑う。
「うん。家族で来たときは、いつも最後にあれに乗ってから帰るって決まってたんだ」
「へぇ。そうなんだ。んじゃ、行こうぜ」

 メリーゴーランドの乗り場の少し手前のところまでくると、由井くんが突然足を止めた。

 どうしたんだろう?

 そっと横顔を見上げると、由井くんの視線は乗り場前のカップルに注がれていた。

 あ、あの人たちってさっきの――。

「ひょっとして、あたしのことつけてきたの?」
 カノジョが、隣にいるカレシの腕にぎゅっとしがみつく。

 つけてきた?

 由井くんの顔をもう一度見上げると、苦しげな表情で、ぎゅっと唇をかみしめていた。

 ねえ。ひょっとして……さっき言ってた元カレって、由井くんのことだったの!?