緑が多い木のぬくもりを感じる店内はコーヒーの香りがしていて、とても心地よい。
窓側で待つその人は、桐谷 奈々香、楓のお母さんだった。
あたしと楓は奈々香さんに向き合うように並んで椅子に座った。まだ先ほどの行いに恥ずかしさが残るあたしは少し俯きながら、照れ笑いをする。
そんなあたしに、奈々香さんはクスクスと静かに笑っている。
「やっぱり可愛いわねぇ、千夜ちゃんは」
そう言われて、思わず俯いていた顔を上げて奈々香さんを見ると、優しい笑顔であたしに微笑みかけてくる。
なんだか、さっきも聞いたようなセリフ。
綺麗に切りそろえられたボブの黒髪がサラリと揺れる。長めの前髪を耳にかけ、コーヒーのカップを手に取ると一口飲み静かにテーブルへと戻した。
「で、どうだったの?」
「そりゃもちろん合格でしょ!」
「えーーー! すごーい! やっぱすごいわ千夜ちゃん!」
「いや、俺だろ、すごいの」
「何言ってんのよ! 千夜ちゃんが頑張ったからに決まってんでしょ!」
急に始まった親子の会話にあたしは着いていけずに、奈々香さんが頼んでくれていたレモネードを一口飲む。小さい頃から奈々香さんは楓同様にあたしのことを気にかけてくれて、相談も色々してきた。
やっぱりこの親子には頭が上がらない。
「良かったねー楓。またしばらく楓の事よろしくね! 千夜ちゃん」
「…え!」
申し訳なさそうにそう言ってくる奈々香さんに、あたしは楓の様子をちらりと伺った。
「なんだよ、知ってたから。大丈夫、俺にはいつだって千夜がいんじゃん」
心配をよそに、楓はケロリと笑っているから、あたしはホッとして奈々香さんに聞いた。
「まだ帰ってこれないんですか?」
「うん、仕事がなかなか落ち着かなくて。ほんとごめんね。楓にはずっと寂しい思いさせてる。千夜ちゃんの存在にはほんと感謝しかないのあたし。ありがとう。
また同じ学校に通えるって知ったら、なんか安心しすぎてお腹空いちゃった。なんか食べよっか! 頼んで頼んでっ」
奈々香さんはメニューをあたし達に差し出して、鳴り出した携帯を手に取り席を外した。
隣の楓は表情を変えることなく、レモネードをゴクゴクと飲みきっていた。
楓の両親は楓が小学校卒業間近に離婚してしまって、仕事命の奈々香さんは、楓を置いてここにはいない。
だからって、あたしも楓も奈々香さんを酷い親だとは思っていない。
うちの両親と奈々香さんは学生の時からの友達で、楓はほぼうちで暮らしているようなもので、たぶんだけど、寂しい思いはしていない…はず。
たまにだけど、こうやって帰ってきてあたしと楓の話も聞いてくれる。
「ごめんねー、頼んだ?」
通話を終えて戻ってきた奈々香さんは
「ちょっと、全然頼んでないじゃん。遠慮なんてしちゃダメよー!」
そう言ったかと思うと、メニュー表を手にして注文し始めた。しばらくして、お洒落なカフェテーブルの上に所狭しと置かれた食べ物を堪能し始めたあたし達を見ながら、奈々香さんは満足そうに微笑んでいた。
窓側で待つその人は、桐谷 奈々香、楓のお母さんだった。
あたしと楓は奈々香さんに向き合うように並んで椅子に座った。まだ先ほどの行いに恥ずかしさが残るあたしは少し俯きながら、照れ笑いをする。
そんなあたしに、奈々香さんはクスクスと静かに笑っている。
「やっぱり可愛いわねぇ、千夜ちゃんは」
そう言われて、思わず俯いていた顔を上げて奈々香さんを見ると、優しい笑顔であたしに微笑みかけてくる。
なんだか、さっきも聞いたようなセリフ。
綺麗に切りそろえられたボブの黒髪がサラリと揺れる。長めの前髪を耳にかけ、コーヒーのカップを手に取ると一口飲み静かにテーブルへと戻した。
「で、どうだったの?」
「そりゃもちろん合格でしょ!」
「えーーー! すごーい! やっぱすごいわ千夜ちゃん!」
「いや、俺だろ、すごいの」
「何言ってんのよ! 千夜ちゃんが頑張ったからに決まってんでしょ!」
急に始まった親子の会話にあたしは着いていけずに、奈々香さんが頼んでくれていたレモネードを一口飲む。小さい頃から奈々香さんは楓同様にあたしのことを気にかけてくれて、相談も色々してきた。
やっぱりこの親子には頭が上がらない。
「良かったねー楓。またしばらく楓の事よろしくね! 千夜ちゃん」
「…え!」
申し訳なさそうにそう言ってくる奈々香さんに、あたしは楓の様子をちらりと伺った。
「なんだよ、知ってたから。大丈夫、俺にはいつだって千夜がいんじゃん」
心配をよそに、楓はケロリと笑っているから、あたしはホッとして奈々香さんに聞いた。
「まだ帰ってこれないんですか?」
「うん、仕事がなかなか落ち着かなくて。ほんとごめんね。楓にはずっと寂しい思いさせてる。千夜ちゃんの存在にはほんと感謝しかないのあたし。ありがとう。
また同じ学校に通えるって知ったら、なんか安心しすぎてお腹空いちゃった。なんか食べよっか! 頼んで頼んでっ」
奈々香さんはメニューをあたし達に差し出して、鳴り出した携帯を手に取り席を外した。
隣の楓は表情を変えることなく、レモネードをゴクゴクと飲みきっていた。
楓の両親は楓が小学校卒業間近に離婚してしまって、仕事命の奈々香さんは、楓を置いてここにはいない。
だからって、あたしも楓も奈々香さんを酷い親だとは思っていない。
うちの両親と奈々香さんは学生の時からの友達で、楓はほぼうちで暮らしているようなもので、たぶんだけど、寂しい思いはしていない…はず。
たまにだけど、こうやって帰ってきてあたしと楓の話も聞いてくれる。
「ごめんねー、頼んだ?」
通話を終えて戻ってきた奈々香さんは
「ちょっと、全然頼んでないじゃん。遠慮なんてしちゃダメよー!」
そう言ったかと思うと、メニュー表を手にして注文し始めた。しばらくして、お洒落なカフェテーブルの上に所狭しと置かれた食べ物を堪能し始めたあたし達を見ながら、奈々香さんは満足そうに微笑んでいた。


