大通りから少し外れた 大きな三角の屋根のログハウス風のカフェ。大きなガラス窓から、緑あふれる店内が見える。
まだ新しい匂いと木の香り、そしてコーヒーの香りに癒される。

オープンしたてのこのカフェは、この前千夜と楓が奈々香と会った場所だった。

この前の席とは違い、店内の奥にはソファーとローテーブルの少し特別な空間があって、そこに圭次は座っていた。
スマホを手にラインを確認すると、圭次はニヤリとした。


「すいませーん、バイトの人ー!」

店内は静かなクラシックのかかる、寛ぎの空間。
そんな店内の奥で圭次は居酒屋にいるような客の勢いで叫んだ。店内には数名の客がいて、みんな驚いた表情で奥の部屋を振り返るが、圭次の姿までは見えない。

すぐ様、カツカツと木の床を急ぎ足で駆けつける音が聞こえてくる。

「圭次! うっせーんだよ、ここカフェだからな。お前の家じゃねーんだよ」

ものすごい勢いできたかと思ったら、とっても小声でそう忠告されて、圭次はそれを「まぁまぁ」となだめる。

「なんだよ、俺は今バイト中なんだよ。邪魔すんな」

「俺の紹介で働いてんだから文句言うなよー。似合ってんぞ、カフェエプロン!やっぱ何やっても似合っちゃうってすげーよなぁ、楓は」
「なんだよ、褒めたってなんもでねーよ」

そう言いながらも、圭次にと持ってきたキャラメルカフェラテのカップをテーブルに置いた。

「で、なんだよ?」
「ん? ……あぁ!」

楓を呼んでおいて、圭次はキャラメルカフェラテに大喜びで飛びつき、フーフーと冷ましながら飲み始めるから、楓は呆れながらも聞いた。

「楓さ、この事千夜に話してないの?」

カップを離すことなく、圭次は飲みながら楓を指差して言った。

「は? なんで?」

面倒に思った圭次は先ほどのラインを開いて、楓に見せながら、自分はキャラメルカフェラテを堪能する。


楓がバイト始めたっぽいんだけど、
どこか圭次場所知ってる?


「これに対してどーしたらいーんだよ?」
「やっぱすぐバレるか。それにしても、圭次を頼るとは……千夜も酷だったろうに」
「最初で最後のラインだろーな、楓が隠し事なんて今までしたことないだろうし。千夜めっちゃビビってるぞ~。今回ばかりは俺の方が有利だからな、色々遊んでやろー」
「ふざけんなっ!」

急に今度は楓が叫ぶから、店内が一瞬静まり返る。
すぐにヤバいと察して、楓は小声に戻る。

「千夜が少しでも不安になるようなことしたらタダじゃすまねぇからな、圭次」
「……はぁ」

圭次は楓の迫力に、大きく深いため息をついた。