マイ・スイート・チョコレート

「あたしね、学校辞めようかなって思ったの」

沙良ちゃんの突然の発言に、あたしは一気に現実に引き戻されて、見上げていた顔を沙良ちゃんの方へ向けた。

「ちょっとまって、だってまだ入学したばっかりだよ?どーして?」

あたしが慌ててそう聞くと、沙良ちゃんは小さく笑った後、悲しい表情に変わって、黙り込んでしまった。

「あたし、沙良ちゃんと友達になりたいって決心したの。こんな絶世の美女とあたしが友達だなんて、かなりおこがましいかも知れないけど、昨日決心したんだよ。それなのに…学校辞めるとか言わないでよ」

「千夜ちゃん…」

こんなステキな秘密の場所を教えてくれたのに、まさかそんな話が出てくるなんて、微塵も思わなかった。
昨日泣いていた事と何か関係があるの?

「…ありがとう。
やっぱり、千夜ちゃんになら話せるかも」

沙良ちゃんはあたしの方をしっかりと向いて、目に涙を溜めながら話し始めた。


「あたしが好きになった人がね、ここの学校の先生で、しかも担任だったの。

あたし、入学式の日に先生がいることに気がついて、すっごく嬉しくて、これから毎日会えるんだって思ったら幸せで、先生もそう思ってくれてるんじゃないかって勝手に思ってて……

だけど、それってあたしの勘違いだったの。
昨日ここに連れて来てもらって、あたしはこの場所を知ったんだけど、その時に俺のことは忘れてって言われて……」

あの時泣いていたのは、やっぱり見間違えじゃなかったんだ。

「……でもまって、それってどーいうことなの? 二人は付き合っていたの?」

あたしが状況を理解するのに苦しんでいると、沙良ちゃんは首を横に振った。

「もともとは、あたしがここの高校に入るためにお願いしていた、家庭教師の先生だったの。勉強はもちろんだけど、一緒に居てすごく楽しくて、あたしが一人で舞い上がってただけだったのかもしれない。
だから、昨日そう言われて悲しくて、悔しくて、学校辞めてやるーってヤケになって、今日は休んだの」

「そう、だったんだ……」

なんだかスケールが大きくて、あたしには受け止めきれない話だな。

あたしは、涙を流すくらいに誰かを好きになった事がないからよく分からないけど、こんな風に悩んで苦しんでいる沙良ちゃんもやっぱり綺麗で、何か気の利いた言葉を言ってあげたいのに、見つからない。

「あー! なんかみんな話したらスッキリした!」

急に大きな声で沙良ちゃんがそう言って伸びをするから、あたしは拍子抜けした。