「あーあ、誰かなぁ。こんなに可愛い女の子を泣かせちゃったのは」


そういって私の前に腰掛けて、手で私の涙を拭う……だけど。



………非常に近い。



距離は10センチないくらいだし、そもそも初対面の女子の涙を拭うって……?



噂には聞いていたけれど、これは想像以上。



男慣れしていない私にとっては、簡単に顔が赤くなってしまう。



そんな彼の名前は澄野明(すみのめい)くん。



はっきり言ってチャラい、だけど人当たりが良くて生徒からも先生からも大人気。



休み時間、彼の周りには大抵可愛い女の子がいて、黄色い声を浴びながら笑ってる。



………でも、なぜか誰とも付き合わない。



「……幼なじみくんのこと、そんなに好きだったんだ」


「……っ、なんで、澄野くんが知って–––––」


「だって、俺あの時校門前にいたから」



急に話題を変えてきたと思ったら、まさか見られていたなんて。


それに、よりにもよってこの人に。



恋愛なんてある意味、し放題な彼に失恋したばっかりな私。



………なんなんだ、この組み合わせ。



このまま座っているわけにもいかないので、私はスッと立って自分の席に腰掛けた。