「あれ、今ドキってした?ねえした?」
「……………」
いつものヘラヘラした顔に戻る澄野くん。
うん、だいたい察してたけど………
……まあ、本気で言うわけないよね!!!
こんな奴に不覚にもドキってしてしまった私が恥ずかしいんだけど。
「…もう知らない。やっぱり軽いよ」
「えー……、冷たい」
あなたのせいでしょうが……!
拗ねた子供のように言う澄野くんは、もうさっきのかっこよさなんて微塵もない。
………ちょっと自分自身に腹が立ってきたから、美鈴と違う場所で世間話でもしようかな。
私たちの会話を隅でじっと見ている美鈴に声をかける。
「美鈴、行こっか……!」
「ちょ、ちょっと莉々!アンタ、顔めっちゃ怖いよ……?」
美鈴は若干引き気味。
まさか、美鈴にもそう言われてるなんて、私がどんだけ屈辱的な思いをしているのだろうか。
とりあえず、今は一刻でも澄野くん、いやこのチャラ男から離れたい……!
私はそう思いながら、美鈴と教室を出てこの怒りを鎮めるために深呼吸をした。
「……誰があんなこと冗談で言うかよ」
一人残った教室で、澄野君が小さくそう呟いたのも知らずに–––––––


