カミーユは僅かに頬を染めるが、しかしゆっくりとその首を横に振った。ふわふわと、緩やかに波打つ髪が揺れる。その様にさえ、心臓が高鳴った気がした。



「今日の夜会は、アルベール様が健在であることを示すための、終戦の日を祝うものなのでしょう? アルベール様が行かなければ、始まりませんわ」



 「ね?」と言って微笑むカミーユは平気そうな顔をしていたけれど、おそらく最も夜会に出席したくないのは、彼女であろう。

 カミーユの言った通り、今日の夜会は終戦の日を祝うと共に、周辺各国から要人を招いて、英雄と呼ばれるアルベールの存在を見せつけるためのものでもあった。つまり、他国への牽制のための国際行事でもあるのだ。

 そんな趣旨であるため、アルベールの周りにはたくさんの客人が集まるだろう。もちろん、男性、女性に関わらず。カミーユに触れさせるつもりは一切ないが、注目を集めてしまうのは間違いなかった。

 それを理解した上で、彼女は自分と共に来てくれると言っているのだ。

 案の定と言うべきか、カミーユの言葉に頷き、「仕方がない」と言って渋々と差し出した掌に触れた彼女の手は、僅かに震えていて。その健気な様子に、そのまま彼女の身体を抱き込んでしまいたいのを、彼女が望まないからと、アルベールは必死に抑え込む。

 あまりにも愛おしくて、目が離せなくて。だから。



「もしかしたらと思って話してみたけれど、どうだろうか。……まあ、カミーユ嬢が幸せそうだから、良いか」



 幸せそうな二人の様子を微笑ましそうに、ほっとしたように眺めながら、ジョエルがぽつりと呟くのに、アルベールは最後まで気付かなかった。