ローズ様は絵画から目を離す。
「誰に聞いた?」
「誰にも聞いてません。ルピナス様が泣いているのを慰めていた時のことを考えていたんです。現状だとルピナス様が王位継承者となってしまって重圧を与えてしまっていることを話して頂いた時、なんというか…ご結婚したい方がいらっしゃるのかなって」
「女の勘は恐ろしいな。母上にそっくりなだけはある」
 ローズ様は笑うと、ゆっくりと歩き出した。
「国王になる人間は他国の姫君を結婚相手として迎える決まりがある。だから俺は昔から色んな国の女とお見合いをしてきた」
「強制結婚じゃないんですね」
 ローズ様は立ち止まった。
「俺にも選ぶ権利はある」
 これだけの美男子なんだから、誰もが放っておかないだろうなあ。
「一年前、とある国の姫君とお見合いをした」
「じゃあ、その方ですか?」
「いや、姫君の妹に惚れた」
 惚れた…という言葉に思わずニヤニヤしてしまう。
 ローズ様と恋バナしちゃってるよ。
「妹様だと何か問題があるんですか?」
「ああ、問題があるから今、こうして一人ってことだ」
 宮殿を出ると、目の前に噴水がある。
 2人で噴水を見た。
「…奪っちゃえばいいのに」
 口から零れ出た言葉に、ローズ様はぎょっとしてこっちを見た。
「ローズ様なら不可能ではないでしょ?」
「綺麗な顔して、すげーこと言うな」
 ローズ様は私をじっと見た。
 この人と似ているのだろうか?
 単純に金髪に青い目だから似ているように見えるだけじゃないのかなあ。

 黙って見ていると、ローズ様は「アハハハ」と声をあげて笑い出した。
「さすがだな。ほんとに」
「ありがとうございま…す? なんで笑うんです?」
「イバラに会えて良かった。そうだな、その通りだ」

 それから、一年後。
 国王は、とある国のお姫様を誘拐してお妃にしましたとさ。
 私というと・・・。


 終わり…?