まさか断られるとは思っていなかったのか、蘭様は暫く固まった後。
 顔色がどんどん悪くなっていった。
 今までは権力かざして思い通りにいったのかもしれないけど。
 これ以上、教えたいとも思わなかった。
「もう一度、言います。私はご子息とご令嬢に教えるのには相応(ふさわ)しくありません」
 空気が重たくなるとわかっているけど、あえて言う。
 蘭様は下を向いた。
「こちらに非があるのは重々承知の上だし、失礼だとわかっている。それでも、貴女(あなた)には子供たちにピアノを教えてあげてほしい。お願いします」
 蘭様はさっきとは違って、丁寧に頭を下げた。
 私は、蘭様に聞こえるようにわざと大きくため息をついた。
 太陽様は私の態度にビックリして大きな目をぎょろぎょろとさせている。
「わかりました。ただし、お願いがあります」