色褪せて、着色して。~悪役令嬢、再生物語~Ⅲ

 太陽様にお酒を買ってきてもらい、棟梁のところへお礼に行くと言うと。
「あ、俺。セシルさんがお世話になった人達にあいさつ回りしますよ」
 と、言い出した。
 ・・・別にいいのに。
 何をいまさら、亭主ヅラしやがる…とイラッとする。

 とりあえず、バニラに太陽様の相手をさせて自分は一人、
 門番をしているジョイさんに棟梁の家がどこにあるか尋ねると、
「ああ、向こう側」
 と言って。宮殿のほうを指さしたので「えー」と悲鳴をあげた。
「棟梁はああ見えて、貴族だからね」
 ニヤニヤと笑うジョイさん。
 隣ではマリアちゃんが冷ややかに私を見ている。
「棟梁に用があるなら休憩の時、呼んでこようか?」
 長身のジョイさんが見下ろしながら言ったので、黙って首を横に振った。
「そういや、あんた。旦那さん帰って来たんだってな」
 マリアちゃんの言葉にビクッと肩を震わせる。
 興味なさそうな顔して、何で知っているんだか。
 ジョイさんが「まっじでー!? 渦中の旦那さんかあ」と驚いて言った。
 カチュー…って言わないでほしい。
「ねえねえ、マヒルちゃん(・・・)の旦那さんって国王に『これは私の妻なので手を出すな』と怒ったて本当?」
 急に「マヒルちゃん」と呼び捨てにしないで…と言いたかったけど、それよりも驚いて何も言えない。
 マリアちゃんが「ふうーん」と言った。
「国王相手にそんなこと言えるんだから、すっげー男だよなあ」
「一体、どこまで噂が広まってるんですか?」
 やっと出た反撃の言葉に、ジョイさんはマリアちゃんを見た。
「だいたい、突き抜けだよなー。太陽はそれで、今回の戦地で死ぬほどこき使われたって話だし」
「…完全なる公私混同だな」
 無表情でマリアちゃんが言うけど、綺麗な顔立ちなので変な感じだった。