色褪せて、着色して。~悪役令嬢、再生物語~Ⅲ

 ボロボロの廃墟状態だった家は、それはそれは綺麗な平屋として生まれ変わった。
 サンゴさんの家には随分とお世話になってしまった。
「ピアノないなら、毎日でもうちに弾きに来ていいからな」
 サンゴさんが言うと、カイくんは万歳して「毎日来ていいよ」とスケッチブックに書いた。

 サンゴさんとカイくんにお礼を言って。
 新しい家へと引っ越す。
 人間って家を建てられるものなんだ…と変な気持ちになる。
「家づくりは初めてでしたが、楽しいものなのですね」
 新しい部屋に入って、立ち尽くす私にバニラが声をかける。
「今回でやっと学んだなあ。人に支えられているって肌で実感した」
「ふふっ。マヒル様は優しい人です」
「バニラは私を褒めすぎ。調子乗っちゃうからね」
「いいえ。本当のことを言っただけですわ。マヒル様は、ご令嬢だというのにドレスを脱ぎ捨てて毎日木くずにまみれながら、家づくりを頑張っておられました。それは、誰にも出来ないことですわ」
 バニラはうさぎのような…真っ赤な瞳でこっちを見た。
「我が(あるじ)は偉大です」

 大変な毎日だったのかもしれないけど。
 王家にピアノを教えているときよりも、毎日が充実していた。
 サンゴさんの「戻るんだろ?」という言葉が引っかかっていたけど。
 現状といえば、戻れる気配なんてこれっぽちもなかった。