色褪せて、着色して。~悪役令嬢、再生物語~Ⅲ

 蘭様に追い出されて3ヵ月が経った。
 もうその頃には、蘭様の部下による監視は無くなったみたいで。
 手伝ってくれる人には手伝ってもらい、家を建て直した。

 出来上がった家を目の前にして、私はやれば出来るものなんだと感動する。
 お世話になった人達にお礼がしたいと言えば。
 棟梁は良い酒が飲みたいと言われ、
 ジョイさんとマリアちゃんには国王に自分達を評価してもらうように口利きしてほしいと頼まれ、
 カイくんたちは「何もいらない」と言われ、
 サンゴさんは「うちのピアノを調律してくれればいい」と言われた。

 皆、欲がなさすぎでは…。
「うーん。バーベキューでもする? お祝いにぱあーっとさ」
 なにかプレゼントしたくても、お金はない。
 だけど、幸いなことに食糧は無償で貰える。
 バーベキュー用の鉄板やら網はこっそり棟梁にお願いして手に入ったし。

「バーベキューって何?」
 食いしん坊のキキョウくんが首を傾げる。
「網の上でお肉やお野菜を焼いて食べることですわ」
 バニラが説明するけど、キキョウくんたちは想像できないのか首を傾げるばかり。
「ま、やってみようか。サンゴさんも誘ってみんなでワイワイやろう」

 家の前で、バーベキューの準備をして。
 皆でお肉や野菜を焼いていく。
 バニラとサンゴさんは進んでお肉や野菜を焼いて皆のお皿に乗せていく。
「おまえら、しっかり食え」
「サンゴ様も食べてくださいね。わたくし焼きますから」
 なんか、バニラとサンゴさんを見るとほっこりするのは何でだろう。

 食べ盛りの少年達によってお肉は一瞬で消えていった。
 バニラが追加で焼きそばを作って見せると。
 みんな、「なにそれ?」と焼きそばに興味津々だった。

「マヒルさん、戦争が終わったって話。聞いたか?」
 座って食べていると、サンゴさんが隣に座ってきた。
「え、そうなんですか?」
「国王もあんたの旦那さんも帰って来るそうだ」
 サンゴさんの言葉に、ピタッと手を止めた。
「カイたちに言ったら怒るから言われねえけど。あんた、戻るんだろう?」
「モドル・・・?」
「隣国の姫君がこんなところにずっといたら、俺みたいに腐っちまうよ」
 何で、サンゴさんは自虐するのだろう。
 考えてもいなかった言葉に、どうしていいのかわからなかった。