色褪せて、着色して。~悪役令嬢、再生物語~Ⅲ

 自分の美貌を武器に生きてきたつもりだけど。
 人生で最大のモテ期が来たのではないか。
 多分、カイくんたちはアイドルを見るような目で私を見ている。
 ちやほやされるのは悪くはないけど。
 ユキさんの件で心から懲りた。
 相手を思いやる気持ち…自分の私利私欲のために動いたら絶対に不幸になるってことを。
 ようやく学んだ。

 反省なんかしないで人のせいにして生きてきた。
 ここにきてようやく自己嫌悪に襲われるようになった。
 落ち込んでいる私をみてバニラは気づいているのかもしれないけど、
 そっとしておいてくれる。
 妖精のパワーは凄い(笑)

 涼しい国とはいえ、室内は熱がこもっているので、汗をかく。
 額の汗を拭っていると。
 外の方で「うわー」という声がしたので。
 誰か来たのかなと思い、手を止める。
 鼻と口を覆った布を取って外に出ると。
 サンゴさんが立っていて、サンゴさんにぴったりとカイくんが抱きついていた。
 サンゴさんを見たナズナくん、セリくん、キキョウくんの3人は固まっていた。
「カイ、ちゃんと手伝えてんのかあ?」
 とサンゴさんが意地悪そうに言うと、カイくんは、ぷくうを口を膨らませる。
 サンゴさんが、ここに来るのは初めてだ。

「英雄のサンゴ様ですよね?」
 ナズナくんが顔を真っ赤にしてサンゴさんに言う。
 エーユーって何だろう?
 脳内でエーユーが英雄に変換されるのにしばし時間がかかった。
「すげえ、本物がいる」
「触っていいですが?」
 セリくんが興奮して叫んで、キキョウくんは遠慮なしにサンゴさんの右肩を触る。
「ほんとカイばっかりずるいよな。英雄と住んで、更には姫君と一緒に住んでさ」
「何か言ったらどうだ!」
 セリくんとキキョウくんがカイくんを追っかけまわす。

 ぽかんとしていると。
 サンゴさんが私に気づいてこっちにやって来た。
「今更なんだけど、俺も手伝っていいかな?」
「え!?」

「見た通り片腕だから、出来ることは限られてるかもしれないけど。カイよりは役に立つ」
 サンゴさんが言うと。カイくんはスケッチブックに「そんなことない」と乱暴に書いた。