足がガクガクと震える。
 ユキさんの圧が半端ない。
 あの時と同じだ。
 太陽様の兄、ナイト様に呼び出されて文句言われたときと同じ目をしている。
 ナイト様はあからさまに怒って私を非難したけど。
 ユキさんは、冷静に言うからもっと怖い。
 体格から見るに、この人も騎士だったんじゃないのか。
 威圧する力が凄いのだ。
 汗のかいた手をぎゅっとグーにする。
「あの子たちの生い立ちって知ってる?」
「いいえ」
 首を横に振る。
「あの子たちは騎士になれなかった子たちだ」
 なれなかった…と、どうして言い切ってしまうのだろう。
 まだ子供なのに、どうして過去のことになっているのか。
 黙っていると、ユキさんは話を続ける。
「居場所がないという子をうちで引き取って。彼らに仕事を与えてる。彼らとはきちんと雇用契約だって結んでいる」
 13歳で雇用契約?
 自分の国だったら、絶対にありえない。
 学生ではないか。
 働く義務なんてない。
「朝9時から夕方まで、彼らはうちの屋敷で掃除や料理の手伝い、雑用をやらせてる。お給料だって払っている。衣食住も提供している。なのに、彼らは…貴女(あなた)がこっちに引っ越してから。仕事をサボるようになった」
「……」
「あの子たちはいい子だから、貴女が手伝ってと言ったから断れなかったのかもしれない。でもね、あの子たちに何かあってもマヒルさんは責任取れないでしょう?」
「……」
 視界がぼやけてくる。
 口調は優しいのに、言っていることが正論なので本気でキツイ。
「マヒルさんも家を失って大変なのかもしれないけど。あの子たちだって辛い境遇の中、生きている」
 ユキさんが話す声が途中から聞こえなくなった。
 泣くのをこらえるので精一杯だった。

 自分のことしか、考えてない。

 やっと、気づいてしまった。
 遅かったのかもね。
 私に足りないのは、相手への配慮・思いやりだった。