呼び出し…は今までの経験上。ろくなことがなかった。
 急いで着替えて、カスミさんの屋敷に向かうと。
 カスミさんに中へ入るように言われた。
「…いいんですか?」
「中へ入るといっても、そこのホールで対面して頂くだけですから」
 足を一歩踏み入れると、両脇に階段があって。
 広々としたホールがある。
 そこに高級そうなソファー、テーブルが置いてあって。
 ホテルのロビーのような感じだった。

 ソファーに座っていた一人の男性が立ち上がって頭を下げる。
 ティルレット人ではない?
 青い髪の毛に、真っ先に目に付く彫の深い顔。下手に言えば顔が濃い。
 白い肌が妙に目立つ。
 年は30代真ん中ぐらいだろうか。
 きちんとスーツを着ている。

 案内されてソファーに座ると。
 目の前の男の人が話す。
「僕は、カスミの兄の親友で。この秘密の館に住んでるユキっていうもんです」
「はじめまして、マヒルです」
 この屋敷が、秘密の館って初めて知った。
 ただらぬ威圧感がある。
 怖いと感じる。
 ユキさんは足を組む。
「以前、ここに泊まらせてくれないかと言ってくれたそうだけど。断って申し訳ない」
「あ、いいえ。こちらこそ失礼なお願いを…」
「この秘密の館は女性を泊まらせない方針だからさ」
 女性…じゃあ、カスミさんは女性じゃないのか。
 ユキさんは私の考えていることを読み取ったのか、
「ああ、カスミは例外」
「では、王家の圧力ではないと?」
 ユキさんはナニソレという表情をした。
 ブスリと心臓を突き刺されるような痛みを感じる。

 王家の圧力だと言ってほしかった…
「話は本題に入らせてもらうけど、マヒルさんはここでお手伝いをしている少年たちと顔見知りだよね?」
「はい。たまに家の改装を手伝ってもらってます」
 言い終えると、ユキさんは「うん…」と言って目を閉じる。
「あのね、はっきり言わせてもらうとね」
「はい」
 心臓が一気にバクバクと鳴る。

「何で、あの子たちの仕事を奪うの?」