ダメモトで言ったつもりだったけど。
「あの人しかいない!」と男の子たちは叫んで、走ってどこかへ行ってしまう。
 暫く待っていると、騎士団の男性が2人やって来たので「ええ!?」と叫んだ。
 職人さんか、村人の方を呼んできてくれるのかと思ったのに。
 まさかの騎士…

「なるほど。この人が国王のお気に入り」
 20代真ん中だろうか、チャラい感じがやたらと目につく。
 赤髪に緑色の瞳、背は高く見るからにお喋りそうな男。
「おい、ジョイ。この人達に関わるなよ」
 と、うんざりした顔でたしなめるのは、中性的な顔立ちをしている男。
「しっかし、こんなボロ家にお姫様住まそうだなんて、蘭様もすっげえなあ」
 ジョイ…と呼ばれる男性はとことんマイペースだ。
「今朝、蘭様から騎士団全体に通達があって、太陽夫人が困っていても一切手を貸すなと命令されてる。だから、周りを頼ったところで誰も助けてくれない」
 冷ややかな声で言われた。
 頭の中でピキピキと音がしたけれど。
 怒るだけ無駄なのはわかっている。
「私は手を貸してくださいとは言っていません。知識がないので、この家をどうすればいいのかアドバイスが欲しいだけです」
 作り笑顔をすると、ジョイさんが「ひゃひゃひゃ」と声を出して笑った。
「さすが、国王のお気に入りだなあ。マリアちゃん、姫君にカリカリしちゃ駄目っしょ」
 マリアちゃん…。
 チラリと男性の顔を見ると、「あのなあ…」とジョイさんを見る。

「俺達は騎士団だろ。上の命令には背けない」
「まあまあ。ちょっとくらい助言してやってもいいっしょ。それに国王の寵姫だよ? 国王が戻って来たときに、ご褒美もらえるかもしれないっしょ。いつまでも門番だのパトロールだのなんてやってられる?」
 ジョイさんの言葉に、「うっ」とマリアさんは声を詰まらせた。