カスミさんの言葉に、思わず「大嫌い!」と言いたくなった。
 もう、話したくもない。
 こんな大きな屋敷なのだから泊めてくれてもいいのに。
 私とバニラは、カスミさんをじっと見た後。
 無言で、その場を離れた。

 屋敷を離れて、ぐしゃりとしゃがみ込んだ。
 足が、限界だった。
 もう、夕暮れで夜がやって来る。
「キャンプファイヤーするしかないねえ」
 と力なくバニラに言った。
 バニラは無表情だった。
 我慢していた涙が溢れるように出てきた。
 皆、酷い。
「私が何をしたっていうの?」
 両手で顔を覆った。
 ドロドロとした感情はマグマのように、一気に噴き出てくる。

 生まれたときから、両親を失望させてきた。
 魔法が使えない。スペックだってピアノというあまりにも特殊すぎる能力で。
 ずっと、家族は私に無関心だった。
 身分の高い人間と結婚出来れば、私の人生は最高になれると信じていた。
 どこで、狂ったんだろう。
 この国に来て別人として生きても。
 自分として生きたとしても、何をやっても。
 どこへ行っても上手くいくわけじゃない。

 ぐずぐず泣きながら立ち上がると。
 バンッと何かがブツかってきた。
 ブツかってきたモノを見ると。
 カスミさんの屋敷で働く男の子だった。
 男の子はランタン片手に、私の服をぐいぐいと引っ張った。
「マヒル様、ついてこいって言っているようですわ」
「……」
 ずずっと鼻をすすって、男の子に言われるがままついて行く。