蘭様に呼び出しをくらったのは、カレン様を家に泊めてから3日後だった。
 あの時、バニラがメグミ様を使って、カレン様が家に泊まることを宮殿に伝えるように手配したけど。
 なんとなく、呼び出されるんだろうなというおぼろげな予感はあった。

 若い騎士が応接間まで案内してくれて。
 中に入ると、見るからに怒りまくってる蘭様がソファーにどかっと座っている。
 目の前に座るように言われ、静かにソファーに座った。
「この前はカレンが貴女(あなた)の家に泊まったそうだな」
「ええ、奥様から聞かれているかと思いますが」
 私がそう言うと、かっと蘭様の目が見開いた。
 碧色の目がぎょろりとこっちを捕らえる。
「その場にいたテンマ騎士によると、夜中に散歩していたカレンを宮殿まで送ろうとした際、あんたが無理矢理カレンを家に連れ込んだと言っているんだが」
「……」
 こいつ、馬鹿か?

 私は呆れて何も言えなかった。
 奥さんの話は聴かずに、あのモブオッサン騎士のことを真向に信じている。
 そして、自分の考えは常に正しいとさえ思いこんでいる。

 …ローズ様とは全然違う。

「どうした? 何か、言いたいことはあるのか?」
「じゃあ、()きますけど。ご用件は何でしょうか? 牢屋にでも入れられるのですか? それとも首でもはねるのですか?」
 淡々と言う私に、蘭様は顔を真っ赤にし始める。
「カレンに対しても、そのような失礼な態度を取っているのか?」
「失礼かどうかはカレン様に聞いてくださいな。今日は一緒ではないのですね」
 蘭様は勢いよく立ち上がると。
 私を指さした。
「今後一切、王家に関われぬよう引っ越してもらいたい」
「……」
「家に帰っていますぐ、こちらの指定した家に引っ越して暮らしてもらう。村の外れでせいぜい静かに暮らせ」
「わかりました」
 立ち上がって、深々と頭を下げる。
「ああ、ローズに泣きついても無駄だからな。あいつは昨日から戦場に行っているから当分帰らない」
「あの、蘭様」
 頭を下げたまま言うと、「なんだ」と面倒臭そうな声がする。
「夫の太陽は、何か罰は与えられるのでしょうか?」
「たいよう? 肉体班の騎士に関して俺は一切口出しすることはない。というか出来ない。ローズがどうにかしない限り、罰はないだろ」
「ありがとうございます」