いきなり…な展開に、私は口をあんぐりと開けたままだ。
「いいえ、それは結構です。カスミさんやお子様に悪いので」
男に対して、冷静に返事をするバニラ。
「お子様って誰のことっすか?」
カスミさんの子供を抱えていたのだから、てっきり私はこの男がカスミさんの旦那さんだとばかり思っていた。
だが、話をよくよく聞いてみると、男の名前はイナズマさんと言って。
カスミさんの旦那さんではないことが判明した。
「また、遊びに来てくださいね。夫にも会わせたいです」
散々、ご馳走になったというのに。
カスミさんは手土産にこれでもかというくらいの野菜をくれた。
流石に私とバニラだけでは運べなかったので、イナズマさんに手伝ってもらって。
そのまま家まで送ってもらうことになった。
馬車に乗り込むと、何故か目の前にイナズマさんが座る。
「え?」と言う間もなく、私の隣にはバニラが座った。
てっきり、御者席(運行席)にイナズマさんが座るのかとばかり思っていたのに…
髪型はアップバング。
栗色の髪の毛に細い眉毛、鋭い眼。
色白で制服からにゅっと出ている手は細くてごつごつしている。
騎士団の人間は腰に長剣を身に着けているのが一般だけれど、イナズマさんは両脇に短剣を身に着けている。
目が合うと照れくさそうに、目をそらされ…何なの? この人。
「あの、イナズマ様。送っていただいてありがとうございます」
沈黙に耐えられず、お礼を述べる。
馬車は何故か速度が異様に遅くて、わざとゆっくり走っているのかと錯覚する。
「俺ごときにお礼なんて言わないでください。姫君」
「ひめ…ぎみ!?」
隣にいたバニラがクスクスと笑い出した。
「姫君だなんて…ここでは、身分なんて」
と言いかけて、あれ? 隣国の王族っていう設定だから、姫君で合っているのか?
「イナズマ様は騎士団の宿舎ではなく、カスミ様たちと一緒に暮らされているのですか?」
バニラが話題を振ってくれて、ほっと胸をなでおろす。
「俺は宿舎ですけど。たまに兄貴…ああ、兄貴っていうのはカスミの兄上のことなんですけど。兄貴もあの屋敷で暮らしてるんで、たまに泊まってるんですよ。今日はカスミの子供の子守に来たんで…」
見た目はヤンキーみたいに怖いのに、子守出来ちゃうんだ…
「あのお屋敷には色んな方が住まわれているのですねえ。いつかは、きちんとあの屋敷のご主人様に挨拶しませんと」
「あのお屋敷の主人ってカスミさん…カスミ様の旦那様?」
バニラの言葉に首を傾げながら質問する。
「あの屋敷は表向きは兄貴…カスミの兄上が主人っすから」
表向き…という気になる言葉が出て更に首を傾げる。
イナズマさんは「あっ」という声を漏らして考える素振りをしたけど「ま、いいか」と呟いた。
「カスミの旦那は人前に出れないんで」
「人前に出れない・・・」
更に気になる言葉だ。
「王族の方なんですか?」
バニラが突っ込むと、イナズマさんは「違う」と即否定する。
「まあ、カスミは姫君に会わせたがっているみたいだから。直接会って確認してください。あいつ、ピアニストだから話が合うかもしれない」
「あれ、私。イナズマ様にピアノを弾くことって伝えましたっけ?」
初対面だというのに、何故知っているのか。
私の質問に対して、イナズマさんは口角を少しだけ上げたのだった。
「いいえ、それは結構です。カスミさんやお子様に悪いので」
男に対して、冷静に返事をするバニラ。
「お子様って誰のことっすか?」
カスミさんの子供を抱えていたのだから、てっきり私はこの男がカスミさんの旦那さんだとばかり思っていた。
だが、話をよくよく聞いてみると、男の名前はイナズマさんと言って。
カスミさんの旦那さんではないことが判明した。
「また、遊びに来てくださいね。夫にも会わせたいです」
散々、ご馳走になったというのに。
カスミさんは手土産にこれでもかというくらいの野菜をくれた。
流石に私とバニラだけでは運べなかったので、イナズマさんに手伝ってもらって。
そのまま家まで送ってもらうことになった。
馬車に乗り込むと、何故か目の前にイナズマさんが座る。
「え?」と言う間もなく、私の隣にはバニラが座った。
てっきり、御者席(運行席)にイナズマさんが座るのかとばかり思っていたのに…
髪型はアップバング。
栗色の髪の毛に細い眉毛、鋭い眼。
色白で制服からにゅっと出ている手は細くてごつごつしている。
騎士団の人間は腰に長剣を身に着けているのが一般だけれど、イナズマさんは両脇に短剣を身に着けている。
目が合うと照れくさそうに、目をそらされ…何なの? この人。
「あの、イナズマ様。送っていただいてありがとうございます」
沈黙に耐えられず、お礼を述べる。
馬車は何故か速度が異様に遅くて、わざとゆっくり走っているのかと錯覚する。
「俺ごときにお礼なんて言わないでください。姫君」
「ひめ…ぎみ!?」
隣にいたバニラがクスクスと笑い出した。
「姫君だなんて…ここでは、身分なんて」
と言いかけて、あれ? 隣国の王族っていう設定だから、姫君で合っているのか?
「イナズマ様は騎士団の宿舎ではなく、カスミ様たちと一緒に暮らされているのですか?」
バニラが話題を振ってくれて、ほっと胸をなでおろす。
「俺は宿舎ですけど。たまに兄貴…ああ、兄貴っていうのはカスミの兄上のことなんですけど。兄貴もあの屋敷で暮らしてるんで、たまに泊まってるんですよ。今日はカスミの子供の子守に来たんで…」
見た目はヤンキーみたいに怖いのに、子守出来ちゃうんだ…
「あのお屋敷には色んな方が住まわれているのですねえ。いつかは、きちんとあの屋敷のご主人様に挨拶しませんと」
「あのお屋敷の主人ってカスミさん…カスミ様の旦那様?」
バニラの言葉に首を傾げながら質問する。
「あの屋敷は表向きは兄貴…カスミの兄上が主人っすから」
表向き…という気になる言葉が出て更に首を傾げる。
イナズマさんは「あっ」という声を漏らして考える素振りをしたけど「ま、いいか」と呟いた。
「カスミの旦那は人前に出れないんで」
「人前に出れない・・・」
更に気になる言葉だ。
「王族の方なんですか?」
バニラが突っ込むと、イナズマさんは「違う」と即否定する。
「まあ、カスミは姫君に会わせたがっているみたいだから。直接会って確認してください。あいつ、ピアニストだから話が合うかもしれない」
「あれ、私。イナズマ様にピアノを弾くことって伝えましたっけ?」
初対面だというのに、何故知っているのか。
私の質問に対して、イナズマさんは口角を少しだけ上げたのだった。