神出鬼没というか…。
騎士団の制服を着たローズ様は私の手を握ったまま、ずんずんと歩いたかと思うと立ち止まった。
「一人で何をしているんだ?」
綺麗な顔で私の顔をのぞき込む。
ああ、ほんと漫画の世界だよなあと思いながら。
「お腹がすいたので、外に出てみました」
と、正直に話した。
怒られるのかとおもいきや、ローズ様はにっと笑顔になる。
ローズ様に案内されてやってきたところは、建物から少し離れた砂漠だ。
「メグミ、準備しろ」
ローズ様が言うと、強風が吹いて。
目の前にメグミさんが現れた。
魔法みたいだなと思った。
メグミさんは、何本かの枝を持っていて。
それに火をつける。
ぽかんとしながら眺めていると。
「立っていると疲れるから、座れ」
とローズ様が言った。
ローズ様が指さしたところを見ると大きな石が置いてあって。
その上にハンカチが敷いてある。
ローズ様なりの配慮なのか。
何だか可笑しくて笑ってしまう。
メグミさんは、目に包帯を巻いているにも関わらずてきぱきと火をおこして料理を作り始めている。
包帯しているけど、見えているのか。
じゃあ、何でさっき初対面扱いしたんだろう。
口を尖らせていると、「何だ、その顔は」とローズ様が笑う。
「メグミさんに会うのは2回目なのに、不審者扱いされたなあって」
「ああ、すまない。こいつ、生まれつき目が悪いんだ」
何故か、ローズ様が謝るので。
えっ…と声を漏らす。
ローズ様は砂の上にじかに座っている。
一体、どこから鍋が出てくるのか、食糧が出てくるのか全く分からない。
じっと眺めているはずなのに魔法のように、どんどん料理が出来ていく。
小さい鍋からは、シナモンの匂いがする。
網の上には、干し芋のようなものが焼かれている。
小さい鍋をメグミさんが持ち上げると、マグカップに鍋に入った液体を注いでいく。
「どうぞ」
ぶっきらぼうにメグミさんが言う。
「おまえは、お姫様に対してもうちょっと愛想よくなれよ」
とローズ様が文句を言った。
受け取ったカップの液体を、ふうふうと冷まして飲む。
シナモンと他にもスパイスが入っているようだ。
「チャイですか、これ」
隣で同じものを飲んでいるローズ様に質問する。
「おまえの国ではチャイと呼ぶのか? ミルクティーにスパイスを大量に入れたものだ。身体があたたまる」
「網で焼いているのはなんですか?」
「干した芋だ」
干し芋みたいだな…と思ったけど。
まさか本当に干し芋とは。
「この国にも、干し芋はあるんですね」
焦げ目のついた干し芋を、メグミさんは銀皿の上に乗せて渡してくれる。
「騎士団の携帯食として使ったりするからな。俺は干したほうの芋が好きだ」
まさか、国王が干し芋が好きだとは…
イケメンなのに、干し芋をガツガツと食べているローズ様が何だか可愛い。
本当に目の前にいる人は国王なのだろうか。
「昨日のパーティーはどうだったか? 楽しめたか?」
干し芋を食べ終えたローズ様はこっちを見た。
「はい。楽しめました。サクラ様とお話しましたよ」
「そうか、それは何よりだ」
「ローズ様は昨日いませんでしたよね?」
マグカップを両手で持ちながら質問する。
もしかして、ローズ様がいるのかもしれないと、期待して探したけど見つけられなかった。
「俺は人前にはあまり出られないからな」
ローズ様の一言に、自分がいかに馬鹿げた質問をしてしまったかというのを後悔した。
フツーに目の前で会話しているけれど、この人はやはり国王なわけで。
そんな簡単に騎士団の前に顔なんて出すわけない…
私が黙り込んでいる間に、せっせとメグミさんが片付けを始める。
せっかちだなあ…と眺めるしかない。
「パーティーが上手くいったようで良かった」
独り言のようにローズ様が言う。
何で、こんな早朝にいるんだろうとローズ様を見ると。
今になって制服の汚れに気づいた。
足元の泥や、肩のあたりにシミがついている。
黒い制服だから気づかなかったんだ…
「ところで、君の呼び名は決まったか?」
じっとローズ様に見とれていたので、質問されたことに驚く。
「へっ。私の呼び名ですか?」
目の前の焚き火は既に片付けられ、目の前には何もなくなってしまった。
いつの間にか、メグミさんの姿がない。
「えと、マヒルです」
まひる…とローズ様は呟くと、眉間に皺を寄せた。
「君にそんな名前ふさわしくない」
「えっ…そんなこと言われましても」
「君みたいな美しい人間こそ、花の名前を付けるべきだと思う」
ローズ様は立ち上がるとお尻についた砂を払った。
私も慌てて立ち上がる。
「私は、この国の王族ではないので花の名前なんて付けるわけにいきません」
「だが、隣国の姫君なのだろ? だったら、問題ない」
どういう基準だよ…とローズ様を見つめる。
日の光に当たるローズ様の髪の毛がキラキラと光っている。
何度見てもローズ様は美しくて、カッコイイ。
「じゃあ、サボテンでいいです」
近くに生えているサボテンを見て、ぶっきらぼうに言う。
「…もうちょっと可愛い名前はないのか? サボテンは棘があるぞ」
「棘って、薔薇にだって棘があるじゃないですか。それなら、私はイバラで充分です」
ローズ様の横に立つ。
ローズ様は「いばら…」と呟くと。
とびっきりの笑顔でこっちを見た。
「いばらか、いい名前だ。近寄りがたいが、美しい君にぴったり」
「…それって、けなしてますよね?」
ぷぅ…と頬を膨らませると。
アハハハとローズ様が笑う。
私の頭に手をぽんぽんと乗せると。
「来て良かった」
と言った。
美しい顔で、そんなことを言われたら。
胸がぎゅんっと痛くなる。
何だか、無性に恥ずかしいって思った。
騎士団の制服を着たローズ様は私の手を握ったまま、ずんずんと歩いたかと思うと立ち止まった。
「一人で何をしているんだ?」
綺麗な顔で私の顔をのぞき込む。
ああ、ほんと漫画の世界だよなあと思いながら。
「お腹がすいたので、外に出てみました」
と、正直に話した。
怒られるのかとおもいきや、ローズ様はにっと笑顔になる。
ローズ様に案内されてやってきたところは、建物から少し離れた砂漠だ。
「メグミ、準備しろ」
ローズ様が言うと、強風が吹いて。
目の前にメグミさんが現れた。
魔法みたいだなと思った。
メグミさんは、何本かの枝を持っていて。
それに火をつける。
ぽかんとしながら眺めていると。
「立っていると疲れるから、座れ」
とローズ様が言った。
ローズ様が指さしたところを見ると大きな石が置いてあって。
その上にハンカチが敷いてある。
ローズ様なりの配慮なのか。
何だか可笑しくて笑ってしまう。
メグミさんは、目に包帯を巻いているにも関わらずてきぱきと火をおこして料理を作り始めている。
包帯しているけど、見えているのか。
じゃあ、何でさっき初対面扱いしたんだろう。
口を尖らせていると、「何だ、その顔は」とローズ様が笑う。
「メグミさんに会うのは2回目なのに、不審者扱いされたなあって」
「ああ、すまない。こいつ、生まれつき目が悪いんだ」
何故か、ローズ様が謝るので。
えっ…と声を漏らす。
ローズ様は砂の上にじかに座っている。
一体、どこから鍋が出てくるのか、食糧が出てくるのか全く分からない。
じっと眺めているはずなのに魔法のように、どんどん料理が出来ていく。
小さい鍋からは、シナモンの匂いがする。
網の上には、干し芋のようなものが焼かれている。
小さい鍋をメグミさんが持ち上げると、マグカップに鍋に入った液体を注いでいく。
「どうぞ」
ぶっきらぼうにメグミさんが言う。
「おまえは、お姫様に対してもうちょっと愛想よくなれよ」
とローズ様が文句を言った。
受け取ったカップの液体を、ふうふうと冷まして飲む。
シナモンと他にもスパイスが入っているようだ。
「チャイですか、これ」
隣で同じものを飲んでいるローズ様に質問する。
「おまえの国ではチャイと呼ぶのか? ミルクティーにスパイスを大量に入れたものだ。身体があたたまる」
「網で焼いているのはなんですか?」
「干した芋だ」
干し芋みたいだな…と思ったけど。
まさか本当に干し芋とは。
「この国にも、干し芋はあるんですね」
焦げ目のついた干し芋を、メグミさんは銀皿の上に乗せて渡してくれる。
「騎士団の携帯食として使ったりするからな。俺は干したほうの芋が好きだ」
まさか、国王が干し芋が好きだとは…
イケメンなのに、干し芋をガツガツと食べているローズ様が何だか可愛い。
本当に目の前にいる人は国王なのだろうか。
「昨日のパーティーはどうだったか? 楽しめたか?」
干し芋を食べ終えたローズ様はこっちを見た。
「はい。楽しめました。サクラ様とお話しましたよ」
「そうか、それは何よりだ」
「ローズ様は昨日いませんでしたよね?」
マグカップを両手で持ちながら質問する。
もしかして、ローズ様がいるのかもしれないと、期待して探したけど見つけられなかった。
「俺は人前にはあまり出られないからな」
ローズ様の一言に、自分がいかに馬鹿げた質問をしてしまったかというのを後悔した。
フツーに目の前で会話しているけれど、この人はやはり国王なわけで。
そんな簡単に騎士団の前に顔なんて出すわけない…
私が黙り込んでいる間に、せっせとメグミさんが片付けを始める。
せっかちだなあ…と眺めるしかない。
「パーティーが上手くいったようで良かった」
独り言のようにローズ様が言う。
何で、こんな早朝にいるんだろうとローズ様を見ると。
今になって制服の汚れに気づいた。
足元の泥や、肩のあたりにシミがついている。
黒い制服だから気づかなかったんだ…
「ところで、君の呼び名は決まったか?」
じっとローズ様に見とれていたので、質問されたことに驚く。
「へっ。私の呼び名ですか?」
目の前の焚き火は既に片付けられ、目の前には何もなくなってしまった。
いつの間にか、メグミさんの姿がない。
「えと、マヒルです」
まひる…とローズ様は呟くと、眉間に皺を寄せた。
「君にそんな名前ふさわしくない」
「えっ…そんなこと言われましても」
「君みたいな美しい人間こそ、花の名前を付けるべきだと思う」
ローズ様は立ち上がるとお尻についた砂を払った。
私も慌てて立ち上がる。
「私は、この国の王族ではないので花の名前なんて付けるわけにいきません」
「だが、隣国の姫君なのだろ? だったら、問題ない」
どういう基準だよ…とローズ様を見つめる。
日の光に当たるローズ様の髪の毛がキラキラと光っている。
何度見てもローズ様は美しくて、カッコイイ。
「じゃあ、サボテンでいいです」
近くに生えているサボテンを見て、ぶっきらぼうに言う。
「…もうちょっと可愛い名前はないのか? サボテンは棘があるぞ」
「棘って、薔薇にだって棘があるじゃないですか。それなら、私はイバラで充分です」
ローズ様の横に立つ。
ローズ様は「いばら…」と呟くと。
とびっきりの笑顔でこっちを見た。
「いばらか、いい名前だ。近寄りがたいが、美しい君にぴったり」
「…それって、けなしてますよね?」
ぷぅ…と頬を膨らませると。
アハハハとローズ様が笑う。
私の頭に手をぽんぽんと乗せると。
「来て良かった」
と言った。
美しい顔で、そんなことを言われたら。
胸がぎゅんっと痛くなる。
何だか、無性に恥ずかしいって思った。