年に数度、騎士団の肉体班の中で開催されるパーティー。
 夫婦もしくは恋人同士で出るのが絶対条件。
 その時々で活躍した騎士団を上層部が選んで、招待状が送られてくる。
 一泊二日。
 ちなみにパートナーがいない騎士は除外。(なんか、それも酷い気がするけど)

 パーティー会場は辺境付近にある建物。
 女性は早めに来いとの命令だったので、早めに会場入りする。
 案内係に部屋まで通されると、メイクルームだったので驚く。
 既に何人かの女性が鏡の前に座って、メイクを施されている。
 ぽかんと立っていると、「あらあ」という野太い声にチラッと視線を移すと。
 腕がムッキムキのオネエらしき人が立っているじゃないか。
「海外の人は初めてだわあ。座って」
 手前の椅子に座るように言われて、言われるがまま座る。
 これからショーで踊りますって言うような厚化粧なのに服装はタンクトップに白パンツというよくわからない格好をしたオネエだ。
「あんまり化粧しちゃうと、貴女(あなた)の良さが消えちゃうからねえ」
 鏡越しに私の顔をまじまじと見ながら言うオネエ。
 他の人達を見ると、女性にメイクしてもらっているのに。
 私だけ当たりを引いてしまったのかもしれない。
 この国にも、オネエっているんだって感心する。
「もしかして、騎士団のパーティーははじめて?」
 オネエはすぐに化粧をするのではなく、顔のマッサージを始める。
 顎のあたりをぐりぐりとマッサージされながら、「そうです」と答える。
「やっぱり? 初めて見る顔だからそうかと思ったの」
「あの、いつもパーティーのときってメイクさんがいてメイクしてくれるんですか?」
「そうよ。面白いでしょ。これも、国王が決めたことなのよ」
 国王…と聞いて、「ん?」と眉間に皺を寄せる。
「ほら、騎士団って身分は関係なく弱肉強食の世界じゃない? 結局、のし上がって騎士団の中で偉くなっても、家に帰れば庶民って人が沢山いるのよ」
「…はい」
 話がよくわからず曖昧に頷く。
 口を動かしながらも、オネエはてきぱきと手を動かしてメイクを始めてくれる。
「誰もが対等にパーティーへ参加出来るように、メイク係がいて。女性には制服を用意してそれを着てもらうの。ねっ、面白いでしょ」
「なるほど…」
 あまりピンとこなかったけど。
 パーティーに参加するときになってようやく理解する。
 貴族出身の人もいれば、庶民の人だっている。
 豪華なドレスを着ることのできない人のために、ローズ様が考えてくれたのだろう。
 仮装パーティーみたいだ。
 ただ、メイクを終えて、女性の制服とやらを見て、何故? と思った。
 赤いブラウスに黒いシンプルなスカート。
 衣裳部屋では、お針子さんがいて、サイズが合わない人の為にミシンですぐさま縫ってくれている。