「肉体班の中でも、更に細かくチームが分かれていて、一番優秀なのがZチームだったかな」
「普通は、優秀なチームだとABCから始まりそうですけどね」
 思わず口を挟むと、ケン様はガハハハと笑った。
「うちはどういうわけか、Zチーム、YチームXチームって後ろのアルファベットから優秀なチームを付けているのさ。ZYXは優秀だから、ほとんど人前に出ることはないって言われている。あ、そうだ。ちなみに太陽はWチームで国王の側近って立場っだのによ、この前の戦でヘマして、Pチームくらいまで落ちたって話だぜ」
「うわぁ…」
「えー…」
 ほぼ同時に私とバニラが声を漏らした。
「なんでも敵にとどめを刺せなくて、国王の逆鱗に触れて、半年間。故郷に帰って頭冷やして来いって命令されて。半年近く休んで最近復帰したかと思えば、チーム変えられてるんだもんなあ。おおっと、奥さん怒ってるのか?」
「…え、いいえ。別になんとも」
 別に怒っているわけじゃないが、ケン様には私が怒っているように見えるようだ。
 目の前では、一対一で剣を使用した稽古が始まっている。
 ちょうど、噂をしていた太陽様が剣を持って戦っているではないか。
「奥さん、太陽はさ。強いんだよ。天性の素質があるからさ。ほら、見てみ」
 太陽様を見ると。
 太陽様は瞬殺で相手の剣を吹っ飛ばした。
 温厚なイメージの強い太陽様が剣を持つと別人のように強くなる姿に。
 目が離せなくなる。
「ただ、優しすぎるんだよ。騎士に優しさを持ってしまったら、おしまいなんだよ」
「それって、辛いですね」
 バニラがぽつりと言った。
 私もそう思った。
 優しいのだと思う。太陽様は。
 優しいから私と結婚したわけで。
 自分の感情を殺してまで、騎士団になったのには訳があるんだろうか。

 太陽様のことを考えながら騎士団の稽古を眺める。
 自分には想像出来ないようなキツくて辛い世界なんだと思う。
「おっと、そういえば。奥さん、招待状は届いた?」
 物思いにふけている自分をケン様は現実に引き戻す。
「招待状?」
「おう。年に数回行われる懇親会ってやつ」
 寝耳に水。
 私はすぐさまバニラを見ると、バニラは首を横にぶんぶんと振った。
「うちにそんなもの届いてませんわ」
 悲鳴をあげるように大声でバニラが言った。
「そうかい。多分、そのうち届くと思うさ。太陽の名前は名簿に入っているみたいだし」
「それは、騎士団の方だけが招待されるものなんですよね? でしたら、家ではなく、直接本人に渡したほうが早くありませんか?」
 てっきり、騎士団だけのパーティーだと思い、安堵したのも束の間。
 ケン様はアハハハと声を出して笑い出す。
「懇親会はね、夫婦もしくは恋人と出なきゃいけないんだよ」
「…え、無理無理」
 手を左右にぶんぶん振って拒否すると、更にケン様は笑う。
「奥さん残念だけど、国王が決めていることだからね。絶対に参加しなきゃいけないんだ」
 思わず白目を剥いた。
 何ソレ、聞いてないんですけど…。

 騎士団の掛け声の中、ケン様の笑い声が一際、目立っていたのであった。