サラサラとなびくローズ陛下の髪の毛。
 薔薇のアーチをくぐると、更に薔薇が咲いている。
 陛下の目先には、紫色の薔薇と黒っぽい薔薇が咲いている。
「珍しい色の薔薇ですねえ」
 黒い薔薇なんて初めて見た。

 誰もいない静かな薔薇園。
 察するに王族しか入れないのかもしれない。
 ちらりと陛下を見ると、じっとこっちを見ている。
「何故、じろじろ私を見るのですか?」
 考え込むように、じっと陛下は私を見ている。
「君が綺麗だからだろうな」
 さらりと言った言葉にギャーと顔が熱くなる。
 他の人間に言われたら、「うん、知ってる」と対応するだろうけど。
 その整ったお顔で言われると、物凄く恥ずかしい。
「ローズ様もお美しいです」
「…知ってる」
 自信満々に答える陛下に、凄いと思った。
「君は、どこの国から来た?」
「えっ…ああ、私はスカジオン王国からです」
「君の国では、その金髪や青い目は当たり前なのか?」
「当たり前・・・うーん。どうでしょう?」
 何故、そんなことを質問するのだろうと思いながら答える。
「当たり前ではないかもしれませんが、珍しいってわけではないと思います」
「そうか」
 じっと私を見ていた陛下は目をそらした。
 風でぶわっと髪の毛が揺れる。

 ふと、今頃になり冷静になって気づく。
 何で、目の前に王様がいて。
 私は2人きりで薔薇を眺めているのだろうか。

 あれ?
 なんか、おかしくないか、この状況…