久しぶりに会った太陽様と、陛下と呼ばれていた金髪の男性…国王の登場により。
 極度の緊張と疲れがどっと押し寄せて、しばらくの間、ソファーで横になっていた。
「セシル様、夕食のご用意が出来ました」
「あ、うん」
 バニラは何も()いてこない。
 きっと、興味はあるんだろうけど自分からは質問してこないのが偉い子だ。

 夕飯はポトフとパンだ。
「ねえ、バニラ。バニラはご近所さんから王族について聴いたことってない?」
 目の前に座るバニラに直接尋ねる。
 侍女と食事って変だと言われるかもしれないが、バニラは侍女ではなく親友に近いものがある。一人で食事をするのがさみしい自分にとって一緒に食事をしてくれるバニラは嬉しい存在だ。
 バニラはパンを咀嚼していたが、ごくっと飲み込むと。
「王族についての噂ですか? 確か見た目がティルレット人じゃないと聞いております」
「見た目がティルレット人じゃない!? どういうこと?」
 バニラのよくわからない回答に思わず大声が出る。
「国王は代々、他所(よそ)の国からお嫁さん…お妃様を迎えるそうです。ですから、王族はティルレット人の茶髪に茶色い目とは違って派手な見た目だとか…」
「派手な見た目…」
 陛下と呼ばれていた男性は完全に、私と同じ海外の容姿だった。
 ということは、あの人は国王確定じゃないか。

 スプーンを置いて、サーと血の気が引くのを感じた。
 国王に出会ってしまった…
「どうされました? セシル様」
「え、ああ。うんん。じゃあ、王弟殿下の奥さんであるカレン様も、もしかして海外の人ってことかあって思って」
「…あの方は、違うと思いますよ」
 急に真剣な眼差しをするバニラに「え?」と声を漏らす。
「違うって?」
「あの方はどちらかと言えば…」
 バニラと目を合わせると、バニラはじぃーとこっちを見つめる。
 真っ直ぐな目だ。
「いいえ。何でもないです」
 バニラは答えなかった。
 黙り込んでしまったバニラに、私は嫌な予感を覚えた。
「バニラってカレン様に会ったことあるの?」
「いいえ。お会いしたことはありませんが、風の噂では聴いております」
「そうなんだ。何でも、知ってるんだねー」
 アハハと笑ったけど。
 気分が落ち込むのは何故だろう。
 もしかしたら、カレン様って人間じゃないのかもしれない。
 お会いしたことはないけど噂では聞いているって。
 妖精界では有名な人だってことだろうか?

 知りたいような気もしたけど。
 知ったら知ったで、面倒臭そうなので。
 それ以上、バニラに質問するのはやめた。