別に送ってもらう必要はなかったのだけれど。
 私と太陽様は黙って馬車乗り場まで歩いて。
 一言も発しないまま馬車の中で過ごした。

 久しぶりに会う太陽様は、更にマッチョになっているような気がした。
 沈黙が怖い…
「あの、さっきの方のこと…陛下ってお呼びしてました?」
「それは、秘密です」
「は?」
 太陽様は睨みつける。
 怖い・・・
「あの人の存在は秘密なんです」
 太陽様は窓の外を眺める。
 それって、さっきの人物が国王だって認めていることになるじゃん!!

 国王っていうとオッサンのイメージだけど、随分と若い。
 何より、見た目は完全にティルレット人ではない…
 色々と聴きたいことはあったけれど。
 太陽様が怒っているのがわかったので、話しかけることが出来なかった。
 馬車が家の前で止まって、降りると。
 すぐさま、家のドアが開いて、バニラが出てきた。
「お帰りなさいませー、セシルさ…ま?」
 バニラが私の後ろに立っている太陽様を見て、酷く驚いている。
 だが、バニラ以上に驚いて目を見開いているのは太陽様だった。
「シナモンさんじゃないっすか、何で、こんなとこにいるんすか?」
 髪の毛の色と瞳の色が変わったとはいえ、バニラの見た目は以前のシナモンと変わっていない。
 やっば…と思ったけど、バニラは「はあ?」と口に出した。
「私はシナモンじゃありません。バニラといいます」
「えっ…バニラさん?」
 バニラの落ち着いた対応に、太陽様はうろたえる。
「シナモンは、私の姉です」
 えー・・・
 心の中で、絶叫する。
 真顔でよくもそんな嘘がつけるよねえ。