それは、真夏のとある仏滅のこと。

(お通夜だから“とても盛大な”という表現も変だけど…まさに盛大なお通夜という感じだなぁ…ド派手というか、ゴージャスというか)

亡くなった叔母、金本和子の通夜の受付を急遽頼まれた、大学生の中山加奈子は、内心、圧倒されていた。

「最近では珍しいよね、こんな大規模な葬式って。今はもう、家族葬がメインになってきてるのに」

隣で一緒に受付をしている15才離れた姉、律子に呟く加奈子。

「見栄じゃないかな。叔母さんの為というより、叔父さん自身のためって感じがする。あそこの息子の結婚式も、かなりの派手婚だったでしょ?」

「あー…それを言われると、納得」


本日の主役である金本和子は、60才の若さでこの世を去った。

和子は、親戚のなかで最も優しい性格だっただけに、やはりいい人ほど惜しまれつつ早くに亡くなるのだろう…。

しかも、和子の夫である叔父、勝彦はDV野郎だったというし、こんな派手な葬式をするぐらいなら、生前にもっと叔母を大事に、優しくしてやればよかったものを。

死んでしまってからじゃ、もう何の意味もないじゃない。

無神論者の加奈子は、そんなことをぼんやり思いつつ、葬儀の会場なのにみっともない喧嘩をしている自分の両親を、冷ややかな目で遠くから見ていた。