「いいよ! 私、ほんと遅いから。
 ゴールで会おうね」

微笑むと「うん!」と笑顔になる菜那ちゃん。

そして、徐々に距離は離れていき、見えなくなった。

ほんと、速いな…。凄い。

ふと横を見ると、小学生の頃からよく話している

加藤(カトウ)がいて、目があった。

「よっ。頑張れよ」

「ありがとう」


そう言うと、加藤も私よりも速いスピードで走って前に行く。

どんどん開く距離にかっこいいなと思わず見惚れた。

私も2人みたい速く走れたらいいのに。

そう呑気に考えていた時、ドンっと誰かに押されて膝から転んだ。

「いたっ…」

咄嗟についた手と膝から砂に混じって血が滲む。

「大丈夫?」

体育の女性の先生が、私の様子に気づいて駆け寄ってくれた。

「…はい。大丈夫です」

「保健室行かないと。1人でも行けそう?」