10月31日。晴れ。気温30℃。

今日はいよいよ体育祭本番の日だ。

今日から3日間はめいいっぱい楽しもう!

とはいえ、私は始まる前からバテている。

暑い!とにかく暑すぎる!

10月終わりで30℃ってなに!?

いつになったら涼しくなるのよ。

「みぃ、おはよう。ねぇ、暑すぎない。死にそうなんだけど。」

「おはよう、咲惠。分かるよ、その気持ち。」

はぁ…と2人でため息をついた。

このど暑いのに、とてつもなく元気な者もいる。

「秋羅!絶てぇ零斗たちの組には勝つぞ!」

「はは、気合十分だね。頑張ろう!」

「おい、俺らの組だってお前ら2人の組には負けねぇからな。」

「なんだとー!零斗このやろー!」

「あぁ??」

あーなんて元気なんだろうか。

零斗くんと真樹はバチバチと火花を散らしている。

秋羅は…うん、楽しそうだ。

「男子ってなんであんなに元気なの?この暑さによく負けないよね。しかも、なんて馬鹿な会話…。」

咲惠は完全に呆れていた。

「あはは…そうだね。」

もう、私に至っては苦笑いしか出なかった。

「皆さん入場門へ整列お願いします!」

そんななか先生から移動の指示が出た。

皆、始めるね!とか楽しみだねとかガヤガヤと騒ぎながら整列を始めた。

「生徒入場!」

開会式が始まった。始まってしまった。

行進、ラジオ体操と順々に住んでいく。

そして、先生の挨拶など話が始まる。

開会式の間は運動場のど真ん中。

つまりテントなどは無い。

暑い。

人間の私たちですら体にくる暑さだ。

なのに、日がダメな吸血鬼の零斗くんは大丈夫なのだろうか?

心配になりチラリと零斗くんをみた。

零斗くんは日傘を差し、ぎゅっと身体を縮め荒い呼吸を繰り返していた。

え、やばいんじゃ?

周りを見渡したが近くに人はいない。

もうこうなると見守るしか無かった。

先生話長いよ!早く終わって!零斗くん倒れちゃうよ!

私はひたすら早く終われと願うことしか出来なかった。

願いが届いたのか、次の人の話はすんなり終わり早々と退場することになった。

私は、退場後直ぐに保健スペースへ向かった。

大丈夫かな…?

零斗くんのことが心配でしかたなかったのだ。

保健スペースに行くと零斗くんは椅子に座り、氷をおでこに当て項垂れていた。

「零斗くん。大丈夫?」

「ん?みぃか。大丈夫大丈夫。心配すんな。」

「そっか。無理しないようにね。」

そう言ってニッコリ笑うと、おう!っと一言。

少しだけ話をして私はテントに戻った。

「みぃ、どこ行ってたのよー。探したじゃん!」

「ごめんごめん!ちょっと零斗くんの体調が心配だったから様子見に行ってただけだよ。」

「ふーん。」

なんだか咲惠はニヤニヤしていた。

「ちょ、何よ!」

「いやー。なんでもー。んで、零斗くんは?大丈夫そうだった?」

「氷で冷やしながら項垂れてた。」

「あちゃー暑さにやられてるね!ま、この暑さじゃ仕方ないか。しかも、快晴だもんね。」

「うん。」

咲惠もヤダヤダと困っていた。

「クラス対抗リレーに出場の方は出場門へ整列してください」

「あ、私行かなきゃ!行ってくるね!」

「うん!頑張ってね!」

私はテントの前の方で応援することにした。

咲惠はアンカーだ。

別に咲惠がやりたいと言った訳ではない。

ほかの出場者達がアンカーは嫌だと言ったから咲惠がやると自ら申し出たのだ。

私はそんな咲惠の判断をありだと思った。

クラスの皆は知らないけれど、咲惠かなり足が早い。

だから、アンカーに向いてると思ったんだよね。

きっと咲惠なら大丈夫!

ようやく咲惠の番が回ってきた。

「咲惠!頑張って!」

大声で言うと咲惠はこちらを向き手を振ってくれた。

そして、ニッと笑った。

そして、前の男の子から2位でバトンを受けとると咲惠は綺麗なホームですごい速さで走り出した。

咲惠、やっぱりすごい!早い!

「咲惠!いけー!頑張れ!」

私の応援にも力が籠る。

2位だったのにあっという間に追い抜かし1位になった。

クラスの皆はかなり驚いていた。

早過ぎないかとざわついていた。

「みぃ!たっだいまー!」

「咲惠ー!お疲れ様!かっこよかったよ!」

私は咲惠に抱きつき喜んだ。

「えへへ!ありがとう!」

そして、その後も順調に種目が続き私の出場になった。

「それでは、玉入れを開始します。」

-バン-

よし!がんばるよ!

皆で力を合わせ1回戦は何とか3位になった。

2回戦目。ちょっとしたトラブルがおきた。

全体にではなく、私だけ。

順調に玉を拾い投げ入れていたが、途中玉を拾うとしたとき、隣の女子に押し飛ばされ転けてしまったのだ。

痛!?

たまたまという訳ではなく、わざと押し飛ばしたらし。

「ダッさ。」

押した女子はふふと笑い競技に戻った。

多分私がいつも零斗くんと居るからだろう。

ここぞとばかりの嫌がらせだ。

にしても、痛いなぁもう。

膝を見るとスボンに血が滲んでいた。

あちゃー擦りむいたなこりゃ。

痛いのを我慢し、なんとか玉入れを終えた。

退場門を出ると咲惠がすっ飛んできた。

「みぃ!お疲れ!なんか転けてなかった?大丈夫?」

「あ、うん!ちょっとね!」

ははっと私は笑った。

すると後ろで真樹の怒っている声が聞こえた。

ん?どうしたんだろ?

「おい、お前!みぃのことわざと押しただろ?」

「ひ、酷いよ真樹くん。そんなことしてないもん!葵葉さんは自分で転けたんだもん!」

「はぁ!?嘘つくなよ!見てたんだからな!」

え、真樹!?

真樹は私を押した女子の胸ぐらを思いっきり掴んでいた。

「ちょ、ちょっと!何してんのよ真樹!」

「真樹落ち着いて!」

慌てて2人で止めに入った。

「うっせぇ!離せ!」

「真樹!やめな!何があったの!」

「こいつが玉を拾おうとしたみぃを押して転したんだよ!」

「はぁ!?」

それを聞き咲惠はびっくり仰天だ。

「ち、違うもん!」

女子は必死に否定する。

そんな女子の肩を咲惠はがっしりと掴み、

「本当に違うのね?もし、後でみぃのことを転したなんてことが分かったら、あんた地獄見る羽目になるから。」

咲惠は顔は笑っているが言葉にはかなりの圧がある。

女子はビビったのだろう、ごめんなさい。押しました。と認めた。

「てめぇ!」

「真樹!もういい!もういいから!ね!終わったことだし!」

2人は今にも殴りかかりそうだったので、私は必死に止めた。

その間に女子はテントへ逃げていった。

「ほんとにいいの?今からでも殴りに行くけど?」

「咲惠、やめて。」

暴力だけはやめてと伝え、私は保健スペースへと向かった。

保健スペースへ着くと何やら賑やかだった。

「零斗くん!私、怪我しちゃったから手当して!」

「はぁ?そんぐらいほっときゃ治んだろうが。」

「零斗くん!私、ここ擦りむいたから手当お願いします!」

「うっせぇな!怪我してねぇだろうが!」

あーなるほど。

女子は皆あれですか。零斗くん目当てですか。

あわよくば零斗くんに手当をして貰おう思っていたが、これは無理だ。

ん?というかなんで私は零斗くんにして貰おと思ったの?

怖!?

ブンブンと首を横に降っていると、

「君、どうしたのかな?」

と声をかけられた。

「あ、先生。転けて擦りむいてしまったので手当して貰おうと思って来たんですけど…。」

「あぁ、そうだったのか!では、こっちへおいで。」

保健の先生に奥の空いている椅子に案内された。

うちの学校の保健の先生は男の人。

上森先生だ。

上森先生はとっても優しくて話しやすい先生だ。

先生も大変だな。

こんなに女子に集まられたら仕事しにくいだろうな。

そんなことを考えていると消毒液などを持った先生が戻ってきた。

「お待たせ。ごめんね、遅くな…」

先生の言葉を遮って零斗くんが消毒液を取り上げた。

「貸せ。」

「あ!零斗くん、ダメだよ。今からこの子の手当するんだから。」

「はぁ?俺だって保健係なんだから俺が手当する。センコーはあの女どもどうにかして。もう、俺無理。」

えー仕方ないなぁ。と先生は苦笑いし女の子たちの元へ向かった。

「大丈夫か?お前押されて転けたんだってな。」

「大丈夫…って誰から聞いたの!?」

「ん?真樹が馬鹿でけぇ声でどなってたから聞こえた。」

あんのばか!

「あー…そうなんだ。」

「うん。そう。ま、あんま無理すんなよ。」

にっこりと笑い私の頭をポンポンと撫でた。

え、な、なに!?

急にそんなことされたらドキドキしちゃうじゃん。

てか、なんでこんなにドキドキしてるの!?

もしかして、私って咲惠が言ってたみたいに零斗くんが好きなの?

いやいやまさか!

またしても、私は首をブンブン振った。

「どうした?」

「え!?なんでもないよ!」

「そ。なぁ、あと一種目で昼飯だし、もうここにいろよ。んで、一緒に昼飯行こーぜ。」

「いいよ。」

「ありがとう。」

ニッと零斗くんは笑った。

その後はずっと零斗くんとお喋りをしながら午前最後の種目を見届けて終わった。

「よっしゃ。昼飯行こーぜ。」

「うん!お腹空いたー!」

ちょうどそこへイツメン3人が迎えに来た。

そして、5人で食堂へ向かった。