「これ、ラルカが?」


 ブラントにはすぐに、ラルカが刺したものだと分かったらしい。少々気恥ずかしさを感じつつ、彼女はコクリと小さく頷く。

 その瞬間、ブラントはその場に突っ伏した。


「どうしよう、ラルカ――――僕はもう、ダメかもしれない」


 元々緩んでいた涙腺が決壊したらしく、彼は大粒の涙を流す。ラルカは思わずギョッとしてしまった。


「申し訳ございません! そんな、ショックを受けるほどに下手くそでしたか⁉ 不快な思いをさせてしまったのなら――――」


 慌ててハンカチを奪い取ろうとするが、ブラントはヒョイと腕を動かし、大きく首を横に振る。


「違います!
嬉しすぎて――――幸せすぎて、本当にどうしようもない。
格好悪いところばかり見せて情けない限りですが、ダメです――――全然、止まりそうにない」


 ブラントが笑う。あまりにも幸せそうなその笑顔に、ラルカの心臓がまたもや大きく跳ねた。