ブラントから贈られた髪飾りを身につけ、二人は再び街に出る。
 状況は先程と変わっていないというのに、ラルカは何故か、とてもソワソワしてしまった。


「実はこの後、行きたいところがあるんです」

「もちろんですわ。どちらに参りましょう?」

「劇場に。話題の演目があるらしく、ラルカと見てみたいと思いまして」


 ブラントはそう言って穏やかに微笑む。ラルカはパッと瞳を輝かせた。


「もしかしてそれって、平民だと思っていた女の子が、実はお姫様だったっていうお話ですか?」

「そうです。もしかして、既にご覧になりましたか?」


 少しだけバツの悪そうな表情を浮かべるブラントを前に、ラルカは首を横に振る。


「いいえ。けれど、エルミラさまと一緒にお話をしておりましたの。
これからは女性であっても思うまま、強く生きて良いのだというメッセージが込められたお話だそうで」


 この国では、女性の地位はまだまだ低い。女性で王位に就いたものも存在しない。
 けれど、海外では女王の立つ国もあるらしく、これから見に行くお芝居はそれをモデルにしたものなのだという。

 自立精神の――――とりわけ、『女性であっても活躍したい』という想いの強いラルカとエルミラの二人は、是非見てみたいと話していたのだ。