メイシュが訪れて以降、ラルカの日常は激変した。

 早朝から侍女たちに身体を磨き上げられ、濃い化粧を施される。

 薄紅や朱色、ときにバラのような鮮やかな頬紅を振るい、目の周りを黒くしっかりと縁取られる。まつ毛には長く濃く見えるよう染料を塗り、唇は殊更鮮やかに染め上げる。


「ラルカは可愛いから、どんな色を塗ってもよく似合うわね。こんなに真っ赤な口紅、ブサイクがつけたら悲惨だもの」


 メイシュは満足気に微笑みながら、心ゆくまでラルカを眺め称える。


 化粧が終わると、メイシュが見守る中、何着も何着も着替えをし、彼女の気分にあった一着を選ぶ。

 色はピンクが大半で、フリルや刺繍、レースがふんだんに使われた似たようなデザインが殆どだが、それでもラルカの知らないうちに新しいドレスがクローゼットに増えていく。

 何種類もの髪型を試し、ドレスや髪型に似合うジュエリーを選んだらようやく完成。朝食へと移る。

 食事は贅を尽くしたコース料理で、朝から胃もたれに悩まされる。
 画になるからという理由で、ガーデンテラスでのお茶やデザートを強制された後、ようやく解放。

 出勤した頃にはクタクタになっている。

 けれど、それでも尚、ラルカは働きたくてたまらなかった。

 ラルカが侍女に戻ったのか、ラプルペ家から確認がきたものの、エルミラに仕える全員が口裏を合わせてくれている。
 仕事の内容については今のところ、上手く誤魔化せているようだ。