「もちろん、エルミラさまに頼りにしていただけるだけで、誇らしく、とても幸せなことですわ。けれど、わたくしは欲張りですから……時々、こうして、自分の仕事が何に繋がっているのか、わたくしにできることはなにか、考えたくなるのです」


 そう言ってラルカはうっとりと目を細める。

 はじめはただ、侍女としてエルミラの側にいることが仕事だった。身の回りの世話、エルミラを着飾ったり、華を添えることこそが、ラルカのすべきことだった。

 けれど、そうしている内に少しずつ エルミラが何を見て、何を考えているのか、何を成し遂げたいのか――――そういったものが見えるようになっていった。彼女の手伝いがしたいと感じた。

 それから女官となって早三年。エルミラの瞳を介して見ていたもの達を、いつの間にかラルカ自身の瞳で見るようになっていたのである。


「……といっても、最後に街に出たのはもう一ヶ月以上前のことですの。姉さまは、わたくしが街に出るのを良しとしませんから。
ですからわたくし、今日をとても楽しみにしていましたの」


 ラルカがそう言って満面の笑みを浮かべる。

 ブラントはパッと頬を染め、急いで口元を隠した。
 こんな締まりのない表情をラルカに見られるわけにはいかない――――彼は急いで、穏やかな微笑みを浮かべた。