馬車に揺られること数分、二人は街へと降り立った。
 沢山の人で賑わい、活気に溢れた街並み。ラルカは瞳を輝かせる。


「ラルカはよく街に来るのですか?」

「ええ! こうして街を歩いているだけで楽しいですし、元気をもらえますから」

「……元気、ですか?」


 ラルカの意図がすぐにはわからず、ブラントはほんのりと首を傾げる。ラルカはクスクスと笑い声を上げた。


「はい、元気です。
エルミラさまが愛し、慈しんでいるこの国は、こんなにも豊かで美しいのだと――――わたくし達の仕事にも意義があるのだと、そう感じられますから」


 ラルカ自身は直接的に街づくりに関わっているわけではない。彼女の仕事はエルミラの補佐であって、なにかしら目に見える成果の存在する仕事に就いているわけではないからだ。

 けれど、ラルカの仕事が回り回って、エルミラやアミル、他の文官達が国を良くするための助けになっている――――そう感じられるのが、こうして街に出るときだった。