「もっとよく見せてください」


 ブラントはそう言ってラルカの肩を抱き、彼女をまじまじと見つめた。
 彼の青い瞳は熱っぽく潤み、頬が真っ赤に染まっていく。


「あの、ブラントさま……そんなに見られたら恥ずかしいです」


 あまりにも熱いその眼差しに、ラルカはついついそう漏らす。
 普段は気にもとめない肌のコンディションや吐息、瞬きの回数すらも気になってしまい、気が気じゃない。


「すみません……あまりにもラルカが綺麗で、可愛くて。目が離せなくて」


 ブラントはそう言って、ラルカをギュッと抱きしめる。ラルカの心臓が一際大きく跳ねた。
 男性もののザラザラしたジャケット地に、ブラントの香り。逞しい腕や胸板へと意識が移るにつれ、ラルカは半ばパニックに陥る。


「ブラントさま、えっと」


 これはお礼の一環なのだろうか?
 よくわからないが、こちらから止めてはいけない気がする。

 ブラントは困ったように微笑むと、ラルカの頭を優しく撫でる。


「失礼しました。そろそろ行きましょうか?」

「……え、ええ」


 差し出された腕をラルカがとる。
 彼と出会ったのはつい最近のこと。
 けれど、いつの間にか彼の腕をとることが自然になりつつある自分に、ラルカは密かに戸惑いを覚えるのだった。