【電子書籍化】独身貴族になりたいんです!〜毒姉回避のために偽装婚約を結んだ人形令嬢は、エリート騎士に溺愛される〜

「あ……あの、如何でしょう? 変じゃありませんか? いつもと化粧を変えてみたんです」


 緊張のあまり、ついつい声が震えてしまう。

 今日の化粧は、メイシュが好むお人形のようなメイクとも、勤務中に施すナチュラルメイクとも違っていた。

 暗めの赤をベースにし、ラルカ本人が好む化粧よりも少しだけ濃く色鮮やかに仕上げる。
 髪型は一度きっちりとまとめ上げた後、緩くふわりと崩してみた。これだけで、人形のような印象が幾分和らぐ。

 本当ならば、大人っぽいドレスに合わせアイラインをきりりと長くしてみたり、ブラウンやゴールドのメイクの方が合うのかもしれない。
 けれど、どうせならばブラントに可愛いと思われたい――――本人は気づいていないが、ラルカはそんな風に思っていた。


「ブラントさま?」


 返事を聞くのが怖くて――けれど少しだけ期待してしまう。
 ブラントならば、結果がどうあれ褒めてくれるのではないだろうか?
 相反する感情を抱きながら、ラルカはほんのりと上を向く。