(もしかしてこれが――――オシャレが楽しいっていう感覚なのかしら?)


 今、ラルカの心を占めているのは、煩わしいというより寧ろ正反対の感情だ。

 アイシャドウに頬紅、口紅はどんな色が合うだろう?
 どのぐらいの濃さが良いだろう?

 これまでとても億劫だったのに、ラルカは今、嬉々として鏡に向かっている。


 だって、これはお礼だから――――ブラントのための外出だから。
 彼が何を望むのか、どうしたら喜んでくれるのか、必死に考えるべきなのだろう。
 そんな風に自分に言い訳をしていることに、ラルカ本人は気付けない。


 存分に悩んだ後、手元に置かれたベルを鳴らす。
 すぐに侍女たちが部屋へと来てくれた。


「お呼びでしょうか、お嬢様」

「着替えを手伝ってほしいの。ドレスに合わせて髪を綺麗に結い上げたくて。一人では難しい髪型だから」

「もちろん。喜んでお手伝いしますわ!」


 三人の侍女たちはそう言って、とても嬉しそうに微笑む。