そうして迎えた次の休日。
 ラルカは鏡台の前で、一人にらめっこをしていた。


(どうしましょう……一体どんなお化粧をすれば良いのかしら?)


 ベッドの上には、藍色のドレスが広げられている。誰あろうブラントからの贈り物だ。
 彼へお礼をするための外出だと言うのに、『僕が贈ったドレスで出掛けてほしいんです』と主張され、どうしても譲ってもらえなかった。

 ウエストの部分がキュッと絞られ、全体的に細いシルエットのそのドレスは美しく、可愛いと言うよりもカッコいい。大人の女性のためのドレスだ。
 街なかで着用しても浮かず、けれどかしこまった場所でも浮かないであろうデザインで、とてもラルカ好みである。


 元々、ラルカ自身は大しておしゃれに興味がない。時と場所と状況にあった服を着用するのが一番で、あとは動きやすさを重視する。メイシュの束縛の反動で、明るい色よりも暗めの色を好むし、装飾は少なめの方が良いという気持ちはあるけれど、自分を飾り立てること自体はどうでも良いと思っている。


 しかし、二人で出かけるためにわざわざドレスを用意してくれたブラントの気持ちを考えると、適当に済ましてはいけないだろう――――そんな風に思っていた。

 ドレスに一番合う化粧をし、髪型を整え、アクセサリーを選ばなければならない。
 頭の中でシミュレーションを重ねながら、何だかソワソワしてしまう。