「お礼、ですか? けれど、僕は何も……」

「いいえ、ブラントさま! そんなことはございません! 何もだなんて仰らないで。ねぇ……ブラントさまなら、わたくしがどれほど喜んでいるか、あなたに感謝しているか、おわかりになるでしょう?」


 これほどまでに心を砕き、ラルカのために様々なものを用意してくれたブラントだ。わからないはずがないとラルカは思う。


「それに、わたくしたちの関係は等価交換に基づくもの。これから先も対等な関係を保っていくために、お礼は必要なことだと思うのです」


 このまま貰いっぱなしでは天秤が全く釣り合わない。ラルカの気だって済まない。これから堂々とこの屋敷で暮らしていくためにも、なにか返せるものがほしいと思う。


「いえ……本当に僕は、十分すぎるほど貴女からたくさんのものをいただいているのですが――――ただ」

「なんですの⁉ 何でもおっしゃってくださいませ!」


 ラルカは身を乗り出し、瞳をパッと輝かせる。
 ブラントは微かに頬を染め、躊躇いがちに視線を彷徨わせる。