ブラント邸で迎えた二日目の朝、ラルカは前日と同じように、ブラントと共に朝食の席についた。


「昨夜は何時頃お帰りになったのですか?」


 疲れて帰宅したブラントを出迎えようと、ラルカも遅くまで起きていた。しかし、結局彼とは会えずじまい。先に休むよう、使用人たちから促されてしまったのだ。


「そうですね……城を出たのは、日付が変わった半刻ほど後だったかと」

「まあ! そんなに遅くなられたのですか? アミル殿下の側近とは――――近衛騎士というお仕事は、随分激務なのですね……」


 同じ王族の側近であっても、その職場環境は大きく異なるらしい。
 エルミラは仕事と私生活のバランスを重んじるため、女官や侍女にも長時間労働を求めない人だ。近衛騎士であってもそれは同じ。四六時中側に付いているわけではなく、交代制を採用している。
 ブラントにも休養が必要だろうに、アミルが許さないのだろうか?


「もしかして、普段からこんなに残業を?」

「いいえ、昨日はたまたま遅くなっただけです。今夜は夕食もご一緒できると思います。
だけど、今後も僕が遅くなる日があれば、ラルカは気にせず先に休んでくださいね」

「そうですか。それなら良いのですが……」

「……! まさかとは思いますが、僕を待つように言われたのですか? 使用人たちにはラルカを早く休ませるよう強く言いつけておいたのに」


 ブラントはそう言って、表情を曇らせる。ラルカはハッと目を見開き、ぶんぶんと大きく首を横に振った。