「えっと……その、具体的にはどの辺りが?」

「兄から根回しが得意な人だと聞いているわ。人脈が広く、手札が豊富だって話だから、貴女の家の使用人たちを上手く丸め込んでくれるんじゃないかしら。家のことは彼に任せておいたら大丈夫よ。
それに、ラルカの気持ちを知った上で、仮初の婚約を結んでくれる人なんて、そう居ないでしょう?」

「……はい。わたくしもそう思います」


 何故だろう。未だに心臓がドキドキと鳴っている。ラルカはそっと胸を押さえた。


「あの、エルミラさま。わたくし、今回のことでブラントさまにとても感謝していて……何か、彼のためにお礼をしたいと思っているのですが、どういったものが喜ばれると思われますか?」


 等価交換の婚約のはずが、現状はラルカの方に天秤が大きく傾いてしまっている。何か、ブラントの喜ぶこと――――利になることをしたいとラルカは思っていた。
 けれど、これまで仕事以外で男性と積極的に関わったことはなく、何が喜ばれるのか全くわからない。男兄弟のいるエルミラなら分かるだろうか、と考えたのだが。