ラルカの屋敷の使用人たちは皆、メイシュのことを恐れているという。ここで上手いこと対処しておかなければ、彼らが割を被ることになるし、メイシュを王都に呼び寄せる原因となりかねない。

 ブラントとしては、何があってもラルカを引き渡す気はないし、全力で護るつもりだ。けれど、何事もないほうが当然ラルカの精神衛生上良いことは間違いない。

 使用人たちには、メイシュの監視をかいくぐるための知恵、彼女がブラントの屋敷に滞在する理由を授けようと考えている。


「お前は元々文官向きだし、そういう根回し関係で右に出る者はいない。まあ、まず問題はないだろう。だが、もしも難航するようなら俺の名前を使っていいぞ」

「ええ、もちろん。大いに有効活用させて頂く予定です」


 ブラントはそう言ってチェス盤を眺める。試合に負けたが勝負に勝った――――この国において、アミルほど心強い味方はいないのだから。ブラントはニコリと微笑んだ。